大学分科会(第106回)・大学教育部会(第18回)合同会議 議事録 平成24年6月19日

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大学分科会(第106回)・大学教育部会(第18回)合同会議 議事録

1.日時
平成24年6月19日(火曜日)17時~19時

2.場所
文部科学省第二講堂(旧文部省庁舎6階)

3.議題
  1.中長期的な大学教育の在り方について
  2.その他

4.出席者
委員
(分科会長)安西祐一郎分科会長
(委員)金子元久,北城恪太郎,長尾ひろみ,菱沼典子,宮崎緑,村松泰子の各委員
(臨時委員)有信睦弘,樫谷隆夫,河田悌一,川嶋太津夫,北山禎介,佐藤弘毅,佐藤東洋士,谷口功,中込三郎,中西友子,中野正明,林勇二郎,深尾京司,宮田裕子,山田信博の各臨時委員
(専門委員)川村隆,黒田壽二,小林雅之,白井克彦,荻上紘一,高祖敏明,篠田道夫,鈴木典比古,田中愛治,長束倫夫,納谷廣美,濱名篤の各専門委員

文部科学省
森口文部科学事務次官,田中総括審議官,合田生涯学習政策局長,布村初等中等教育局長,板東高等教育局長,土屋科学技術・学術政策局長,清木文教施設企画部長,小松私学部長,尾﨑初等中等教育局審議官,常盤高等教育局審議官,奈良高等教育局審議官,塩見教育課程課長,義本高等教育企画課長,池田大学振興課長,袖山高等教育改革PTリーダー,太田和高等教育局国際戦略分析官,小谷教育制度改革室長,大金教育課程企画室長,合田高等教育政策室長,樋口大学改革推進室長,平野大学入試室長,松坂私学経営支援企画室長,白井大学振興課課長補佐,杉江高等教育政策室室長補佐,小山田高等教育政策室専門官 他

オブザーバー
小川正人初等中等教育分科会高等学校教育部会長,
安彦忠彦初等中等教育分科会高等学校教育部会長代理,
荒瀬克己初等中等教育分科会高等学校教育部会委員,
及川良一初等中等教育分科会高等学校教育部会委員

5.議事録

(1)国家戦略会議における議論の状況等について,文部科学省から資料1,2の説明があり,その後,意見交換が行われた。
 
【安西分科会長】  6月4日に平野文部科学大臣が,国家戦略会議におきまして,教育改革について御報告をされて議論が行われました。また,その翌日の5日には,高井副大臣のもとに置かれています文部科学省「大学改革タスクフォース」の議論を踏まえた「大学改革実行プラン」を発表されております。このプランは,この大学分科会の審議も踏まえまして,文部科学大臣として大学改革の大きな方向を示されたもので,それをどう政策として形にするかということの多くは,まさに私ども,中央教育審議会の専門的な審議と文部科学省との対話,キャッチボールによることになっていきます。
 そこで本日は,まず,国家戦略会議の議論の状況と「大学改革実行プラン」につきまして,文部科学省から報告をお願いしたいと思います。
 
【義本高等教育企画課長】  今,安西分科会長からお話がありましたように,国家戦略会議に6月4日に大臣のクレジットで,資料1-1にありますような形で「社会の期待に応える教育改革の推進」ということで発表させていただいたわけです。
 その中身の詳細なものにつきましては,資料2という形で,これまでのタスクフォースの御議論,あるいは国家戦略会議の大要なども踏まえまして,詳細なものとしまして「大学改革実行プラン」をまとめさせていただきました。その内容につきまして,資料1,2に合わせまして御紹介をさしていただきたいと存じます。
 国家戦略会議の資料1-1についてお話ししたいと思います。これについては,経緯はこれまでの大学分科会,あるいは大学教育部会でも少し簡単に御報告させていただきましたが,去る4月に国家戦略会議に平野文部科学大臣が呼ばれまして,教育あるいは人材育成の問題について議論したところです。そこにおきましては,特に民間の議員の先生方からの問題提起ということで,例えば少子化の中において大学の数が多過ぎるのではないかとか,あるいはもう少し積極的に国立大学,あるいは私立大学を含めて統廃合,あるいはメリハリある資源配分を進めるべきではないかという話が出たわけです。そこでは結論が出ず,文部科学省としての考え方をさらに整理し,国家戦略会議にもう一度大臣が出席して,レポートバックスを見るという話がありまして,それが6月4日の日に御報告させていただいたものです。この中においては,大学だけではなくて,六三三制の問題も含めて,初等中等教育も含めての話ですので,そういうまとめ方をしております。
 中身につきましては,1枚おめくりいただきまして,1ページ目で「社会の期待に応える教育改革」ということで,全体的な思想,考え方を示したところです。特に外部に開かれた教育への転換ということ,それから,幼稚園から高校,大学への円滑な接続,あるいは産業界を含めた教育とのマッチングという問題を視点に置きながら,次のページにありますような形で教育改革の七つのポイントをまとめております。
 最初の1番目が,小中教育でして,小中一貫教育とか,あるいは高校の早期卒業制度の創設ということを挙げております。2番目以降については,主に大学,高等教育の問題でして,大学入試の改革,あるいは教育機能の再構築とミスマッチということで,今,中教審でまさしく御議論いただいています大学の学部教育の学修時間の問題とか,あるいは産業界との連携のプラットフォームづくりの問題,それから,英語力・グローバル力の向上ということで,ここにありますような取組の話,それから,国立大学のミッションの再定義と重点支援ということで国立大学の改革の話,それから,この分科会でも御議論いただいております学生の75%を占める私立大学の質の充実・支援,あるいはメリハリある配分という問題,それから,世界で戦えるリサーチ・ユニバーシティ,あるいは地域再生の拠点ということで,こういう七つの項目につきまして整理しまして,プレゼンテーションさせていただいております。詳しい内容については,この同じ資料の5ページにありますし,またその内容を大学改革実行プランの中で述べておりますので,ここからの御説明については大学改革実行プランについてお話しさせていただきたいと思います。
 その前に国家戦略会議ですが,文部科学大臣からプレゼンテーションさせていただきまして,いろいろなやりとりをさせていただきましたが,その資料については資料1-2に述べておりますが,結論としましては,ここでお示ししたような改革の全体の方向性の中において,さらに今後の工程とか,あるいは目標をはっきりして,この線で進めていくようにということで総理の御指示をいただいたところです。今後,国家戦略会議においては,新しい日本再生戦略を夏に向けてまとめる内容になっておりまして,そのエッセンスがその中にも盛り込まれる予定になっているところです。
 続きまして,大学改革実行プランの御説明をさせていただきたいと存じます。おめくりいただきまして,1ページに目次がありますが,その概要を中心に御説明したいと存じます。
 おめくりいただきまして,資料2のページ1です。大学改革実行プランの理念,あるいは全体的な考え方をここで触れておりますが,改革の方向性としましては,教育,研究,あるいは社会貢献も含めた大学の機能の再構築を図っていくということ,それから,2番目としましては,再構築するための大学のガバナンスの充実・強化の問題ということを挙げていまして,その方向性のもとで改革のプランの項目を挙げております。特に期待される効果としましては,赤字で書いておりますが,大学自身の持っている知的リソースを生かしながら「社会を変革するエンジンとしての大学の役割が国民に実感できることを目指して」やっていくということを理念として挙げているところです。
 2ページがその目指すべき社会,大学像を書いておりますが,具体的内容につきましては,3ページのところにその全体像を挙げております。先ほど申し上げました二つの軸,すなわち大学の機能の再構築ということと,大学のガバナンスの充実・強化ということですが,その前提として,この上に書いておりますが,国としての大学政策の基本的な方針を大学理念として策定するということを打ち出しているところです。これにつきましては,資料のページの6あるいは7にその内容を触れているところですが,今後の日本社会を展望しながら,求められる人材像,あるいは必要な進学の需要とかいうことを今後の産業界,産業構造,あるいは社会構造の変化を踏まえながら考えていく。その前提の上で,役割・機能,あるいは課題を整理した上で大学政策の方向性という形で,あくまでもこれはイメージですが,その考え方をここでお示ししているところです。
 これにつきましては,中教審でも過去において,大学の将来の在り方について展望いただいておりますので,私どもとしましては,中教審でしっかり御議論いただいて,このビジョンを策定する方向でこれから議論させていただきたいと思っているところです。
 3ページに戻っていただきまして,それを前提にしながら,八つの分類を挙げているところです。これは,先ほど安西分科会長からお話がありましたように,これまでの中教審の御議論,それから,タスクフォースでの議論も踏まえながら整理したところです。
 丸1としまして,大学教育の質的転換,それから,大学入試改革の問題を挙げているところです。これは本日の後半の御審議にもかかわりますが,高校教育改革の議論が進んでおりますし,また大学教育部会を中心に大学教育の質の転換について3月に審議まとめを出していただきまして,今まさしく審議をしているところですが,その流れの中においてしっかりその取組をしていくということ,それから,あわせまして大学教育,高校教育改革と連動しまして高大の接続の問題ということで,大学の入試の問題を取り上げているところです。ここにありますように,高校教育の質の保証とともに,意欲・能力・適性を多面的に評価するような入試にしっかり転換していくというようなことを挙げているところです。
 これにつきましては,このプランの9ページにその概要を述べているところです。すなわち高校,それから,大学の在り方の中においては,高校から一貫した質保証を考えていく。センター試験,あるいは各大学の個別試験も含めまして,より大学が丁寧に選抜できる入試の転換を目指していろいろな整理をしていくということで考えておりまして,できれば中教審でも専門的な御議論を賜りたいと考えておるところです。
 戻っていただきまして,この資料の3ページになります。2番目の柱としましては,グローバル化に対応する人材育成の問題です。24年度の予算においても,グローバル人材育成推進事業など,拠点を形成している取組とか,あるいは学生の双方向の交流の問題,あるいはそれに関連して,この分科会,教育部会でも御報告がありましたが,産学連携協働人財育成円卓会議でアクションプランをおまとめいただきましたが,そういう取組を踏まえながら,よりグローバル化に対応した人材育成を強化していくという話を入れているところです。その中には,秋入学の問題も含めて教育システムのグローバル化の問題もそこで盛り込んでいるところです。
 それから,3点目は地域再生の核となる大学づくり,Center of Communityということで,COCと書いておりますが,その構想を出させていただいております。地域と大学の関係においては,点と点という形での対応はありますが,震災以降,地域における大学の持っている機能,あるいはその在り方ということについての再認識があったわけです。今後,少子化を迎える中において,知的リソースとしての大学の価値を地域と連携して高めていこうということで,そういう取組について,モデル的な取組を着手していこうという内容です。
 それから,4点目は研究力の強化の問題です。この大学分科会でも御議論いただいておりますが,日本の研究,あるいはイノベーションを担う大学の力を強化するための重点支援とか,あるいは研究を重点にする大学自身をその群として育てていくという内容を盛り込んでおります。その前提として,2番目の軸である大学のガバナンスの充実の問題です。丸5にある国立大学改革ですが,法人化以降,いろいろな取組をしておりますが,大学自身の学部あるいは研究科に立ち返りまして,社会との関わりでの存在意義をさらに見つめ直し,そのミッションを再定義し,それに基づいて改革を進めていこうということを国と大学と共同作業という形で進めていくということで,その内容を盛り込んでいるところです。それに関連して,大学群,あるいは大学の連携を促進するという観点から,制度的な選択肢の整備ということも盛り込んでいるところです。
 6点目は,大学改革を促すシステム,あるいは環境基盤整備です。この中教審でも御議論いただいております大学ポートレート,あるいはそれを前提とした機能をより重点化した評価とか,学修の成果をより重視した評価も含めて,その評価の抜本的改革,あるいはそれを支えるものとしまして,教育,研究,あるいは国際性,あるいは地域貢献などを含めました客観的な評価指標を開発していくということを盛り込んでいるところです。それとあわせまして,独立行政法人の改革の中におきまして,大学入試センターと大学評価・学位授与機構の統合という話がありますし,それは閣議決定しておりますが,質の保証を支援するための新しい独立行政法人を創設するということがありまして,そこに位置づけをして取組をしていこうという内容です。
 7番目は,国立大学,それから,私学も含めましたメリハリある資源配分ということで,積極的な連携を促す支援ですとか,あるいはメリハリをつけるということです。国家戦略会議においては,評価に基づくメリハリづけをということで,私学助成についての話がありましたが,基盤経費の性格を堅持しながら今まで続けているメリハリをしっかりし,その対応を考えていくという内容です。
 8番目が大学の質保証の徹底推進です。これまで設置基準,あるいは設置認可審査,その後のアフターケア,認証評価という形で,質を保証するためのいろいろな取組をしておりますが,それをトータルで整理し対応していこうという内容です。その過程において,教学上,あるいは経営上課題がある大学に対して,その是正措置も含めて今後対策を講じ,あるいはその制度的な整備を図っていこうという内容です。そういう8点を盛り込んでおります。中身につきましては,既に予算等もつけて進行途上にあるもの,あるいは入試,あるいは大学ビジョンのように,これから中教審を含めまして御検討いただける内容,あるいは国として責任を持って考えていかなければならない内容が混在しております。この辺を整理させていただきながら,よりしっかりした形で,先ほど安西会長からいただきましたように,キャッチボールしながら取り組んでいきたいと思っているところです。
 4ページには大学改革実行プランの大まかなスケジュールを入れているところです。この灰色で書いているところにありますように,6年間を改革の実行期間と位置づけまして,今年,それから,来年から第二期教育振興基本計画5年間として始まりますが,1プラス5の6年を改革の実行期間と位置づけております。今年度については,始動期ということで,先ほど御紹介しました地域フォーラムを含めて,国民的な議論,あるいは専門的な検討に着手し,その成果を25年,26年として,予算支援制度とか,あるいは制度的な仕組みの整理ということに充てていきたいと思っているところです。その上で,27年からの向こう3年間を検証,評価,あるいは深化発展という機会として位置づけて取り組んでいきたいと思っているところです。
 これは粗々のスケジュールですので,その審議の過程でその取組についてさらに柔軟な対応が必要な点が出てくるかもしれませんが,おおむねこういう工程で考えていきたいと文部科学省としては思っているところです。
 こうした内容につきましては,先ほど申し上げましたように,あくまでも全体の方向性を中教審の御議論を踏まえた形で整理したものです。その肉づけはこれからですので,しっかり議論の仕分けをさせていただきながら対応させていただいて,その着実,あるいはスピード感を持った改革に取り組んでいきたいと思っているところです。
 
【安西分科会長】  ただいまの文部科学省からの説明につきまして,内容は大変濃いものでありますが,この大学分科会等々でもって議論されてきたことが相当に入れられていると思いますが,大学分科会,また大学教育部会等との関わり,それから,今後の検討課題といった観点から,御質問・御意見のある方は御発言をお願いできればと思います。
 
【有信委員】  大学改革実行プラン全体像,これ,非常によくまとめていただいていると思います。今後の議論にも関わる話だと思いますが,例えばグローバル化に対応した人材育成ということと,それから,大学の質保証の徹底推進ということがそれぞれ別のところに書かれてあるのですが,将来的に考えると,この二つというのは全くばらばらには考えられない話でありまして,例えば日本人がいつまでも,日本の企業の傘の下とか,あるいは日本の国の傘の下で海外に出ていくことが続けられるかということを考えると,より一層,海外で日本人が活躍できるような教育を日本の大学でやっていかなければいけない。質保証という意味でもグローバルな視点で質保証を考える必要が出てくると思うのです。ほかのところでも相互に関連するところがあると思いますので,特にグローバル化というのは非常に重要な要素だと思いますから,関連して検討を進めていけるように御配慮いただければと思います。
 
【安西分科会長】  本日のこの件については,是非忌憚ない御意見をいただいて,それをさらに議論に生かしていければと思います。
 
【白井委員】  私は,大学改革実行プランの中身,ポイントというのは良くこれまでの議論を踏まえているし,いい方向性を示していると思います。ただ,やはり2番目の大学機能を再構築するために一体どうするのかと疑問を持ちます。何をやるにも少しはお金がかかります。7番目の財政基盤の確立とメリハリある云々とあって,これ,私学助成を改善・充実と書いてあります。これはどういうことを意味するでしょうか。私学団体のいろいろな試算でやると,今,私学助成というのは三千数百億円ということですが,これ,最低限,あと6,000億円ぐらい投入しないと,スタンダードな教育ができないのです。現実にできてないわけです。それは大学の努力によってやれる部分ももちろんあると思うから,それはやらなくてはいけないが,しかし,いくら努力したってできないものはできないのです。
 ですから,例えば教員対学生比などの非常に単純なことでいっても,世界の標準と比べると半分もいってないのです。そのような状況の中で,どのようにやるのかということです。例えばそれを強制するのであればら,設置基準そのものを変えて,世界のまさにグローバルスタンダードの設置基準にすべきです。どういう方法でやるかというのは,そんなに急にできる問題ではないが,そういうことを,目的をきっちり定めてやっていかないといけない。そのためにはどういう費用を調達するのか,授業料を上げるという手段もあるでしょう。とにかくそういうことをやらない限り,あと,各大学にしてみれば,経営努力しろということです。要するに教員給を下げろとか,そういうことを具体的にやらないと何も進まないのです。ですから,そういうことをやるということをやはり表明していただかないと,システム改善には全くならないと思います。
 それから,もう一つは,もう何回も言っていますが,国立,私立の問題についてここでは何にも触れられていませんが,それはやはり不満です。やはりそこのところのシステムについて,少し手を入れることは,かなりの全体の改善になることは明らかですから,そういうことについても,もう少し具体的に触れてもらいたいと思います。
 
【中西委員】  二つあります。一つはグローバル化ということで,非常にこれは大切で,あちらこちらに出てくるのですが,英語だけができればいいというわけではなくて,日本人としてのアイデンティティーをきちんと持つということが大切です。世界を見る目を養うということは,日本人としての自分の立ち位置がきちんとと分かることなので,国語も大切ですし,日本語も大切ですし,日本の文化,それから,歴史,それもあわせてきちんと教育するということは,どこかに書いてあればいいと思いました。
 それから,もう一つは入試のところですが,入試で今いろいろなところで問題になっているのは,多様な人を育てるということです。しかも,文系,理系にまたがったような人も育てるべきだということなのですが,それは結局は入試につながってきまして,高校生の時期から理系,文系と分けて入試用にいろいろなことを勉強するというシステムが,非常に日本としても,高校生としても不幸だと思うのです。まだ理系は何だということがわからないうちに,あまりにも若いときから,感覚でもって自分は文系,自分は理系となってしまうのです。ですから,せっかく入試を改善するという項目があるので,理系,文系も一緒に何とかならないかということも議論できればと思います。
 
【安西分科会長】  本日は,高等学校教育部会の部会長をはじめ四人の先生方にいらしていただいておりますので,後ほど,またそういうことが議論できればいいと思います。
 
【北城委員】  大学の機能の再構築のための大学ガバナンスの充実・強化と書いてありますので,これからの議論でしょうが,学長のリーダーシップの確立と書かれています。これまで学長のリーダーシップによって改革をするということを言われてきたのですが,現実はなかなか難しいということを考えると,リーダーシップを確立できるような仕組みづくりのところも議論しないといけないと思います。今,学長の先生方はみんなリーダーシップのある方が就任されていると思うのですが,しかし,改革は難しいということを考えると,学長の権限をどのようにするかという議論もこれから行っていく必要があると思います。
 
【安西分科会長】  私もここからが難しい,本当に大学を変えるのはここからなので,ごもっともだと思います。それぞれ文部科学省でノートしていただいて,是非御検討いただければと思う意見ばかりですので,よろしくお願いします。
 
【鈴木委員】  この8項目の中で,丸1に,質的転換とあって,丸8に質保証ということで,質,質と出てくるのです。やはり大学教育というのは,もちろん質を考えなくてはいけないのですが,もう一つ,質と量というのはセットになっているわけで,乱暴な意見かもしれませんが,量という面をどう考えるか,これを考えなければいけないと私は思います。
 といいますのも,やはり日本の国内だけを考えていれば,量的な,ということは学生の数という面ですが,これは減っていくとか,あるいは減らすべきだとかという意見がありますが,今,グローバルという言葉が出てきましたが,そういう観点,あるいはアジアという観点からしても,学生の数は国ごとに増えているところでありまして,御存じのように中国は今,2,400万人で,これが3,000万人になるとか,インドが1,300万人で,これが1,700万~1,800万人になるとか,そういう状況の中で,数からいえば日本の現状が120万人で,自然に任せていても100万人を切るというような状況があるわけです。
 この質ということが今,大学改革実行プランの中で強調されていて,これは誠にそのとおりなのですが,同時に私は量的な側面にも配慮をしていかないと,国内均衡的な感じからすれば,質を上げて量は減らしてということになるのかもしれませんが,国際的な中での相対的な地位,あるいは均衡ということを考えると,質も量も考えなくてはいけないと思います。
 ですから,この中で,どこにも量的な側面への言及がないのですが,どこかで,グローバル化ということの中で考えたときに,量的にもやはり何らかの形で拡大するくらいの政策,あるいは方針が必要だと言及すべきです。結局,そちらの方にいくためには,先ほど白井委員がおっしゃった,では,財政的にどうするのだとか,あるいは18歳から,大学生というのは18歳だけなのかというところです。社会人,あるいはそのほかの人たちも大学の人口の中に入っていくわけで,そういう非常に大きな側面からの大学改革実行プランの在り方というのをどこかで確認しておく必要があるのではないかと私は思います。
 
【義本高等教育企画課長】  鈴木委員が今おっしゃった点につきましては,私の説明が十分ではなかったと思います。大学ビジョンの中で実はその点についても御議論いただきたいと思っているところです。少子化だけではなくて,今,先生がおっしゃったような国際的条理の中での進学率をどう考えるかという問題とか,あるいは産業構造,就業構造の在り方に対応した人材の在り方の問題,あるいは社会人の学び直しも含めて,その点については,これまでどちらかというと,いわゆる個々の施策の話はありましたが,全体のビジョンの中でそういう位置づけをどうするかというのは非常に大事な点ですので,その点につきましては,国家戦略の御議論がありましたが,しっかり位置づけてビジョンの中で御議論を賜る形で進めていきたいと思っているところです。
 
【高祖委員】  大学改革実行プランのこの8項目につきまして,非常によくまとめられていると私も思います。ただ,こういう改革を担っていくのは,やはり教員の存在が非常に大きいです。そこで,教員のことについて何か書いてあるかと思いましたら,8ページの大学教育の質的転換のための取組の中に,教員の教育力向上と書いてあります。ただしここでの教員というのは,大学の教員を念頭に置いているようです。それで,本日の後半の議題になるかと思うのですが,大学は中学校,高等学校,小学校の教員養成を担っています。その点,このグローバル化に対応した人材養成に関連しても,小・中・高,あるいは幼稚園も含めた教員養成の問題も中に取り込んで議論しないと,何かその担い手の存在の重要性が薄くなっているという気がします。
 そう申し上げる一つの理由は,最近,高校の英語の教員の問題を聞いたのですが,ここ10年間で,高等学校で英語できちんと授業ができる先生がどれぐらい増えたか,そういう統計を見ると,あまり進歩がないそうです。しかも,そういう「できる先生」の存在は,大体3割ぐらいでずっと止まってしまっている。そうなると,やはりグローバル化に対応した人材養成というのは,担い手である先生をどう育てるかということも含めて議論する必要があるだろうと思います。大学が教員養成の課程を担っているものですから,そうしたポイントも必要なのではないかと思います。
 
【安西分科会長】  それも全くそのとおりだと思いますが,教員の資質能力向上特別部会というものが一方で文部科学省にありまして,いろいろな議論がされておりますが,この大学分科会となかなか結びつきにくい状況にあったと思います。
 
【濱名委員】  興味深く内容を拝見したのですが,先ほど御発言があったように,グローバル化という言葉がたくさん出てくる。出てくるのですが,中身を見ていると,何か上位10%の語学力の話に非常に焦点が当てられている。日本のグローバル化というのは幅広く,国家戦略でもボリュームゾーンというか,幅広い中間層を対象にグローバル化の影響が出てきて,それへの対応ということで,語学力のみならず,高等教育の政策で言えば,ショートステイ,ショートビジットのように,幅広い層が海外に出ていったり,受入れしたりすることではないのでしょうか。つまり,トップだけがグローバル化していくという状態なのか。残念ながら拝見していて,グローバル化に対応して人材育成の記述は,上位層10%,それと英語力の部分に非常に焦点が当てられているという印象を強く受けるのですが,それはうがった見方なのでしょうか。あるいは特にそういう形で,グローバル化をトップ10%層辺りに焦点を当てて,高等教育政策を機能別分化にドライブしていこうとお考えなのか,お教えいただければありがたいと思います。
 
【義本高等教育企画課長】  今,濱名委員がおっしゃったことで,結論からいうとトップ10%ではなくて,全体のグローバル化をやはり考えていかなければいけないというような視野で今,考えております。そこは,拠点大学をつくっていくということだけでなくて,先ほど先生に御紹介いただいたような,ショートビジット,ショートステイというような形で,これは地方大学,あるいは分野も含めて多様な大学について今後担っていただく,その意味においての対応ということもありますし,それを意識した形で考えていただきたいと思います。ただ,表現ぶりとしては,こういう紙面の状況でして,若干,誤解される点があるのであれば,それはきちんとしっかり丁寧に御説明していくように努力していきたいと思います。
 
【板東高等教育局長】  今,義本課長から申し上げましたように,この紙面には必ずしも十分に盛り込まれておりませんが,一方で政府全体といたしましても,グローバル人材育成推進会議というのがありまして,ちょうど6月4日にもグローバル人材育成戦略という形でまとめておりまして,これから国家戦略会議で今,つくりつつあります日本再生戦略の中にそのグローバル人材育成関係を盛り込んでいこうということになっておりますし,大学改革実行プランなども,それとの連動というのもあるわけですが,その中としては,先ほど中西先生からお話がありましたように,グローバル人材というのは語学が使える人というのではなくて,いろいろな要素を三つぐらい能力を分けていて,その中には日本人としてのアイデンティティーの問題であったり,いろいろな多様性,多文化等をどう共有していくかという力であったり,あるいは一般的な汎用的な力であったりというのがいろいろ入っておりまして,これは,実は先ほども御指摘のように,ここのグローバル人材育成のところの項目で書いてある部分だけではなく,まさに大学教育の質的転換の問題とか,質保証の問題とか,いろいろな項目にグローバル人材育成というのは関連してくる問題だと思っております。
 それから,グローバル人材育成推進会議も,最初は大変限られたトップ層の人材育成というのを念頭に議論を昨年の段階では始めていたわけですが,徐々に議論が進んでいく中で,やはり分厚い中間層と申しますか,もっとグローバル――グローバル化というのは教育全体に関わってくる話ではありますが,例えば海外と仕事をするとか,海外と関わって何か活動をするということを考えても,大変幅広い層が求められるということで,大変幅広くこの人材育成というものは考えていくべきではないかと,大きく転換をしてきておりますので,それも踏まえまして,これ,少し確かに言葉足らず,説明足らずの部分はありますが,文部科学省としての政策の中,あるいは大学分科会などの御議論の中では幅広くお考えいただければありがたいと思っております。
 
【安西分科会長】  全国津々浦々,地域経済も含めてとにかく日本全体がいわゆる大きな意味でのグローバル化の波の中に入っていくということは確実でありますので,是非大きく捉えて大学ビジョンをつくるようにできればと思います。よろしくお願い申し上げます。もちろん今まで言われているトップ層のグローバル化ということももちろん大事だと思います。
 大学改革実行プランの改革のこの計画というのは,よくまとまっていると個人的にも思いますが,この大学分科会といたしましても,大学教育の質的転換,また大学の機能の再構築等々,特に具体的な方策を出して,本当に実質的に大学が変わっていくようにしていかなければいけないので,その点,委員の皆様には是非これからも忌憚のない御意見をお寄せいただければと思いますので,よろしくお願いを申し上げます。
 
 

(2)高校教育と高等教育との円滑な接続のための施策について,川嶋委員から資料4-1,文部科学省から資料3,4-2~4-5に基づいて説明があり,その後,意見交換が行われた。
(略)

 
 
(3)学士課程教育の現状と課題に関するアンケート調査の状況について,樋口大学改革推進室長から,資料5の説明があり,その後,意見交換が行われた。
 
【安西分科会長】  それでは,最後に,学士課程教育の現状と課題に関するアンケート調査の状況について,事務局から説明いただければと思います。アンケート調査につきましては,各大学における学生の学修の実態の把握の観点から,全国公私立大学の学長,学部長を対象に実施されているところです。
 
【樋口大学改革推進室長】  資料5に基づきまして,学士課程教育の現状と課題に関するアンケート調査について,かいつまんで申し上げたいと思います。
 この調査は,去る3月に大学教育部会を中心におまとめいただきました審議のまとめを踏まえて,学士課程教育の現状の認識や改善に向けての取組や課題についての調査を行いました。調査の対象は全国の国公私立大学の学長,学部長です。5月10日から6月4日まで調査を実施しまして,これまで6月4日の締め切り時点では,学長の8割,学部長の6割から回答をいただいております。御回答いただきました学長,学部長の先生方,それから,その作成に至りまして御指導いただいた大学教育部会の先生方に感謝申し上げたいと思います。
 この2ページ以降はそのアンケート調査の実際ですが,この調査は,学長,それから,学部長先生方の目から見た学修状況の認識や学修者の側からの課題,それから,学士課程教育を充実していくための様々な取組やその課題,そうした観点の中における大学のガバナンス,教学マネジメントや学外からの支援のニーズといった様々な項目から成り立っております。この項目については,項目間の相関,それから,回答をいただいております学長と学部長の認識のギャップ,あるいは大学の様々な類型がありますので,その間の相関というのを見る必要があります。また現にこの間も学長,学部長からのアンケートがたくさん集まっておりますので,この数も詰まっております。したがいまして,この調査を分析して,7月3日の合同会議の場でまた分析結果を御報告いたしたいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
 
【安西分科会長】  学部長からもアンケート調査をとったというのは非常に画期的なことだと聞いておりますし,次回の会議で結果を報告していただくということにさせていただければと思います。
 
 
(4)今後の日程について,事務局から資料8の説明があった。
 
―― 了 ――
 
お問い合わせ先
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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