「環境と放射能」の先端研究拠点を『朝日新聞』福島版2012年7月19日付

『朝日新聞』福島版2012年7月19日付

「環境と放射能」の先端研究拠点を

●福島大が設立構想

 福島大学は18日、原発事故による放射性物質の移動や影響を解明するための研究機関「環境放射能研究所」を設立する構想を発表した。国内外の研究機関と連携して、放射能対策で国際的な先端研究拠点をめざす。国の大学改革事業に名乗りを挙げており、予算が認められれば今秋にも発足する見通しだ。

 すでに大学役員室を事務局とする準備委員会を発足させた。メンバーには同大のほか、放射線医学総合研究所や筑波大、広島大、長崎大など放射能研究で知られる研究機関からの参加が予定されている。

 高橋隆行・福島大副学長は、チェルノブイリ原発があるウクライナ(旧ソ連)は平坦(へいたん)な地形で雨が少ない気候であるのに対し、福島第一原発が立地する福島は急峻(きゅうしゅん)で雨が多いほか、土壌の性質や植生も異なると説明。放射性物質の今後の移動や除染の効果、環境への影響などについて長期間にわたる研究が必要と指摘する。

 このため、福島大はすでに連携協定を結んでいるベラルーシ大学のほか、米、英、独、仏、ロシアや国内の大学との共同研究を模索。放射線の基礎や環境、生態、情報科学など様々な研究分野の拠点を整備することにした。

 主な研究内容として、(1)放射性物質の長期的な移動(2)測定技術の開発(3)食物連鎖のメカニズム(4)気象の影響(5)資料やデータの保管――などを想定している。

 国の国立大学改革強化推進事業に数億円の予算を申請している。採択されれば10月にも、研究分野ごとにスタッフを置く組織を作り、来年度以降に専用施設の建設をめざす。最終的に約30人の態勢をめざす。採択されない場合も時期を延ばし、設立の考えは捨てないという。

 高橋副学長は「今回の事故で学術研究拠点はまだなく、福島大が世界の拠点として役立ちたい」と話す。(渡辺康人)

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