九工大がマレーシア校 バイオマス研究推進『西日本新聞』2012年5月8日付

『西日本新聞』2012年5月8日付

九工大がマレーシア校 バイオマス研究推進

 九州工業大(北九州市)が、バイオマス(生物資源)の共同研究協定を締結しているマレーシアの公立マレーシアプトラ大に2013年5月、「マレーシア校」を開校する計画を進めていることが7日、分かった。文部科学省によると、日本の国立大学法人が学位を取得できるキャンパスを国外に設けるのは初めて。太陽光やヤシなどの再生可能エネルギーが安定的に確保できるマレーシアで最先端のバイオマス研究を進めるとともに、世界で活躍できる人材を育成する狙い。

 マレーシアにはマレー系、中国系、インド系など50を超える民族がひしめく。英語が広く使われ、宗教もイスラム教、仏教、ヒンズー教など多彩。親日家も多く、九工大は「国際感覚あふれる人材を育てるには最適」としている。

 両校は3月30日、プトラ大が学内の敷地2ヘクタールに延べ床面積800平方メートルの共用校舎を建設し、九工大がマレーシア校を開設することで基本合意した。九工大は教職員の派遣や実験器材購入に充てる資金の助成を文部科学省に申請する方針。総額5億円とみられ、早ければ今秋にも認可される見通し。

 マレーシア校は学部や専攻の垣根を取り払い、九工大の全学生が利用できる。プトラ大の学生も同校で受講すれば、プトラ大の単位が取れる。初年度は博士課程のみとし、九工大の大学院生約10人が同校に移る見通し。教職員は少なくとも3人を派遣し、ヤシの収穫機械化ややし油の搾りかすの再利用について主に英語で講義する。現地職員も採用する。

 プトラ大は首都クアラルンプールに隣接するセランゴール州にあり、学生数は約1万5千人。九工大はプトラ大と1994年から交流を始め、04年には同大にサテライトオフィスを開設。やし油の搾りかすや廃液からメタンガスを製造する実証工場を建設するなど、連携を深めていた。現在は年に両校の学生延べ約40人が研究のため両国を行き来している。

 18年にわたりプトラ大と共同研究を進めてきた九工大大学院生命体工学研究科の白井義人教授(55)は「年間を通じてバイオマス資源や太陽エネルギーが安定して得られるマレーシアならではの研究ができる。国内の人材育成の面でも、国際経験を積めるメリットは大きい」と話す。(丹村智子)

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