福井大学原子力工学研 人材育成へ問われる真価『福井新聞』2012年4月25日付

『福井新聞』2012年4月25日付

福井大学原子力工学研 人材育成へ問われる真価 

 福井大附属国際原子力工学研究所が今春、敦賀市のJR敦賀駅西側に開所し、新たな一歩を踏み出した。本県のエネルギー研究開発拠点化計画の中核施設の一つとして、重要な役割を担う。東京電力福島第1原発事故を受けて、重要視される原子炉の安全性向上や原子力防災・危機管理などに的確に対応できる人材の育成に向け、真価が問われる。

 福井大では2009年4月に福井市の文京キャンパスに同研究所を設置した。今回、原発が集中立地している嶺南エリアの敦賀市に移転、開所し、研究の軸足を置いたことは、周辺にある原子力関係の各施設や機関との密着度が高まり、人材育成を進める上で大きなメリットとなろう。

 移転に伴い、これまでの原子力工学に関する4分野7部門の組織を、原子炉物理学部門、原子炉構造システム部門など分野なしの6部門に再編した。この中で、福島第1原発事故の教訓をもとに、過酷事故評価やリスク評価、耐震・耐津波などの研究を推し進める原子力防災・危機管理部門を新たに設けたことが特筆される。

 福島事故により、原発の安全神話は完全に崩壊した。原子炉全体の安全性の向上、原子力災害発生時に対するより高度な防災・危機管理技術の研究開発は、避けて通れない重要課題として突き付けられている。

 安全管理、危機管理とも適切で迅速な対応を取るには、幅広い知識を蓄積した多くの人材が必要なことは言うまでもない。とりわけ災害発生時での的確な判断が住民の命を守り、生活を守り、財産を守ることにほかならない。

 研究所では大学院生ら約20人が学ぶ。敦賀市にある若狭湾エネルギー研究センターや県国際原子力人材育成センターをはじめ、電力事業者など関係各機関との連携、交流を深め、絶えず研究内容の検証を重ねていくことが大切だ。

 人材育成の拠点としての評価を高めることで、北陸や中京、関西圏からも学生や教員が集まり、さらには東南アジアや欧米など国外からの研究者や研修生を受け入れる研究都市の構築へとつながっていけば、地域活性化の大きな力ともなろう。

 研究所では地域住民を対象とした原子力安全セミナーや公開講座、研究発表会などを開催することを計画している。こうした場を通して地域の生の声を聞き、住民目線での研究を進めていく体制づくりにも生かしていきたい。

 研究所の名称に含まれている「国際」の文字に重みがある。設置時のスローガンは「世界トップレベルの特色ある原子力人材育成および研究開発を行い、環境と調和した持続的なエネルギー供給基盤を持つ世界の構築に貢献する」である。確固たる信念に基づいた責任感、使命感を強く持ち、大きな成果につなげてほしい。

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