原発技術者の“卵”、各大学院で減少 将来性懸念か『産經新聞』2012年4月7日付

『産經新聞』2012年4月7日付

原発技術者の“卵”、各大学院で減少 将来性懸念か

 原子力関連の専門教育を施し、電力会社や原発関連メーカーなどに人材を提供してきた大学院(工学系)への今春の入学者数が昨年度に比べ、減少して いることが7日、分かった。東京電力福島第1原発事故に伴う業界の将来性への懸念などが背景にあるとみられ、関西電力の原発全11基などを抱える福井県の 福井大大学院は定員割れの事態に。福島第1原発の事故処理には30年以上かかるとされ、古い原発の安全確保にも技術者は不可欠で、大学関係者は「有能な技 術者を絶やすわけにはいかない」と危機感を募らせている。

定員に満たず

  福井大大学院工学研究科原子力・エネルギー安全工学専攻(修士課程)の今春の入学者は昨年度より15人少ない22人。「3次募集まで行ったが、定員(27 人)に達しなかった」(同専攻担当者)といい、同大関係者は「学生が原発事故の影響に敏感になっているのかもしれない」と話す。

 原子力工学専攻や環境工学専攻などが統合され、平成17年に発足した大阪大大学院工学研究科の環境・エネルギー工学専攻(修士課程)は昨年度を8人下回る81人となった。

  昭和32年に原子核工学専攻が全国に先駆けて設置された京都大大学院工学研究科(修士課程)は、昨年度比1人減の23人だった。また、名古屋大大学院の量 子エネルギー工学分野(修士課程)も1人減の21人。九州大大学院のエネルギー量子工学専攻(修士課程)も2人減の35人となっている。

事故を教訓に

 こうした傾向について、杉本純・京大大学院教授 (原子核工学)は「他の大学でも修士の志願者は23年度に比べ全体的に減っているようだ。福島第1原発事故の影響があるとみている」と話す。杉本教授によ ると、1986年に起きた旧ソ連でのチェルノブイリ原発事故以降、原子力関連専攻の学生数は低迷傾向にあった。しかし、数年前からはアジアを中心に新たに 原子力を導入する国が増加するなどし、福島第1原発事故直前までは原子力が世界的に再評価され、学生数も持ち直していたという。

 杉本教授は「仮に『脱原発』を選択するにしても今ある原発を廃炉にするには長い時間が必要。事故を教訓として安全レベルを格段に上げるためにも、今後も技術者育成に貢献したい」と話している。

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