産業構造審議会新産業構造部会(第5回)‐議事要旨 平成24年2月23日

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産業構造審議会新産業構造部会(第5回)‐議事要旨

日時:平成24年2月23日(木曜日)18時~20時

場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

伊藤部会長、秋山委員、柏木委員、金井委員、川島委員、北原委員、楠木委員、白石委員、新宅委員、新浪委員、宮島委員、森委員、守島委員

議事概要

1.経済産業省政務三役挨拶

枝野経済産業大臣
•本日はお忙しいところお集まりいただき感謝。
•これまでの議論を踏まえ、先日、課題対応事業促進法案を閣議決定した。今後、厚生労働省とも連携して具体的に進めたい。
•今日は価値創造型経済社会の実現に向けた人材・雇用を中心に議論していただきたい。多様な担い手による価値創造と個人のスキル蓄積と能力の最大限の発揮がなければ我が国の新産業は育たない。グローバルに活躍する人材、女性の社会参加・活躍、中小企業と学生のミスマッチ解消が課題だと考えている。
•この部会は本年6月までに取りまとめて日本再生戦略に反映していきたい。

中根経済産業大臣政務官
•2月10日付けで政務官に就任した。伊藤部会長を始め、委員にはご多忙の中ご出席いただき感謝と敬意を表したい。価値創造型の経済社会を実現するためには、新産業を支える人材が重要。能力を高め所得を高めることが分厚い中間層の創造につながる。充実した議論に期待している。議論を参考に今後の政策作りに役立てて参りたい。

2.事務局説明
•資料2-1、2-2、資料3、資料4について説明。

3.自由討議

柏木委員(株式会社リクルート代表取締役社長)
•資料は網羅性が高く実例を含めてよくまとまっているが、数多くある中で最重要テーマをどうするかを決めるべき。競争力、成長に結びつくグローバル人材、事業創造人材と、ジョブカラーのチェンジを優先すべき。
•グローバル人材は3つの能力が必要。英語力、多様な価値観を持っている人たちと信頼関係を作れる能力、組織を超えたリーダーシップ。大学と企業、それぞれにおいて磨ける部分がある。
•弊社は韓国の「グローバル青年リーダー育成事業」を通じて優秀な人材が採用できており、国を挙げての取り組みの有効性を感じている。日本もいかに海外に人材を送り出すか検討したい。
•新事業創造人材はシリコンバレーの例もあり、若手のベンチャーへのチャレンジも必要だが、この10年の日本を見ると、ある程度の就業経験を積んだ人が独立する形の方が、実現しやすいのではないか。そのためには、既存企業もニュービジネスを創造しなければならないし、スピンオフ人材に対して、企業は邪魔せず促進するように転換すべき。国は、税制を含めて企業にインセンティブを与えることが必要。
•ジョブカラーチェンジについては、新しい産業で就業するためのリカレント教育が必要。また、従前の教育のやり方だけではなく、新しく生まれてくる産業に就業できるための教育の仕組み作っていく必要がある。

白石委員(関西大学政策創造学部教授)
•日本は既に共働き世帯が多くなっている。しかし男女共同参画以降、女性が就業継続することが難しい状態が続いている。実際、第一子を出産した女性の7割近くが仕事を辞めている。なぜそれほど多くの女性が仕事を辞めているのかの原因を検証し、各企業に働きかけるべき。
•オランダのように、パートでも正社員と同様の権利を確保できるような法制度が必要。日本では、一度仕事を辞めてしまうと、元の仕事に戻ることが難しく、生涯賃金も2億円ほど差が出る。正社員だが、出産・子育て期はパートで働き続けられるような仕組みが必要。
•女性の3人に1人が貧困状態。90歳まで貧困の女性が生きていくことになる。
•私の大学も中国人が増えている。大学の中に海外から有能人材を連れてくると同時に、日本人が海外に出て他流試合をしていくべき。日本の大学の就職課には、海外における日本人人材の求人情報を持っていないことも問題。
•海外留学や海外インターンはお金がかかる。今のままでは裕福な一部の人しか経験を積めない。大学の秋入学以降を契機として、文部科学省とも連携を進めて欲しい。

秋山委員(株式会社サキコーポレーション代表取締役社長)
•分厚い中間層を形成する場合、サービス産業にシフトしているにもかかわらず、生産性が低いところに就業人口が流入している。若手を中心に非正規雇用の比率が上がり、平均賃金が下がっていっている。サービス産業の生産性向上は、新産業構造を考えるに当たって重要なテーマ。いま起きている事実関係を含め共通の理解を深めることが重要。
•サービス産業の生産性向上の具体策は専門外だが、経営努力ではカバーしきれない、構造的なボトルネックがあるなら、業界ごと分野ごとに政策で解消すべき。観光庁が検討している休暇分散化は、混雑が緩和され、サービス産業活性化により内需が拡大する。
•分厚い中間層のイメージとしてダブルインカムツーキッズ。働き方について多様性を認めるべき。各企業の努力もあるが、制度・政策の後押しが必要な時期にきている。
•日経電子版のブログで、ダブルインカムツーキッズについて書いた際の、読者コメントを見ると、年齢が高い人は賛成だが、20~30代の人は、負担感、不公平感を持っている。絵に描いた餅ではないことを具体的に示していくことが重要。
•オランダのワッセナー条約のような同一労働同一賃金という考え方が重要。年功序列や能力主義一辺倒ではない、新たな日本らしい働き方が必要。女性や高齢者が、ライフステージに応じて柔軟な働き方ができ、キャリアチェンジできることが重要。

川島委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)
•資料は、ここでの議論をふまえてまとめられたものであり異論の無い内容だが、柏木委員の指摘の通り、重点の置き方が重要であり、3点挙げたい。
•1点目は人材育成。質の高い雇用を創造して、安定した暮らしを実現することが、経済の発展につながる。そのためにも、また雇用のミスマッチを解消するためにも、人材育成は重要。連合では、教育と職業のつながりの円滑化を提言している。資料中で提案されているような、国内外でのインターンシップは重要であり、大学などの教育機関と企業が分担、連携して、質の高い人材を育成すべき。行政の後押しも必要であり、日本全体のプロジェクトとして、文科省、経産省、厚労省等が横串で進めることが重要。小さな成功をまずは作った上で、日本全体に広げていく。
•2点目は社会人の教育。社会人教育・リカレント教育の重要性を提起しているが、企業の後押しにより、働く者の意欲を高めていく環境作りも重要。本部会で以前、有給教育休暇制度をご紹介した。1974年のILO総会で、教育訓練を受けるために有給で仕事を離れることは労働者の権利であるという採択が行われた。日本は批准していないが、フランスやイタリア、スウェーデンは取り入れられ、法整備を進めている。日本でも休暇取得を支援する制度はあるが、更なる強化が必要。

•3点目は、今後需要が拡大していく分野で働く人たちの仕事の質をどう高めるのか。介護人材を例にとると、年収の水準的に生計を立てていくことが難しい。政府が実践キャリアアップ戦略の中で、キャリア段位制度を導入していくとのことだが、こうした試みをさらに拡大していくことが重要。

楠木委員(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
•柏木委員が指摘したグローバル人材の要件については全く同感。言葉と異文化コミュニケーションについては、やれば出来るが、やらないと絶対にできないので、単純な話。
•日本にも留学生がたくさん入ってきている。日本は、アジアの学生にとってまだまだ魅力的な国。大学において、英語のみで教育するコースと、日本語で教育するコースを並行することによって、日本への留学生が増加する。結果的に日本国内での異文化に触れる機会が増え、日本人の人的資本も高まる。その際、大学に英語で教えられる人材が少ないことが制約になるが、英語で授業をやっていると、徐々にうまくなってくる。
•経営人材の育成こそが最大のボトルネック。海外にビジネスチャンスがあるが、ゼロからビジネスをつくれる人材が少ない。経営人材は、スキルではなく経験を積むことでしか養成できない。サービス業は賃金や生産性が低いと言われるが、サービス業こそ人の力の役割が大きい。

新宅委員(東京大学大学院経済学研究科准教授)
•価値創造経済を考える際に、誰の価値を創造することが経済成長につながるのか、そのために必要な人材はどのような人材か、ということを考えて育成しなければ意味がない。需要がない所に価値を持って行っても空回りするだけであり、狙い所が重要。
•1つが、グローバル需要への対応。海外の需要を取りに外へ打って出る。欧米もあるが、アジアやBRICsなど伸びている市場に、日本がどのように絡んでいくかが重要。今後は、欧米のビジネススクールだけでなく、北京大学や精華大学、シンガポールやインドの工科大学に行くことで、現地の情報を得て新たなビジネスへとつながっていく。
•東大でも海外提携校に行くプログラムがあるが、たいていは欧米に行く。他方で、EUはアジアで若手人材を教育するプログラムを行っており、日本でも行われている。50~100人程度で、半年は英語で授業、半年は日本の企業でインターン。日本にも、EUのような若手を対象としたアジアへの送り出しがあってもよい。
•2つめは国内需要であり、サービス産業の需要が大きいが、他方で生産性が低い。雇用を増やすことも必要だが、付加価値を高める人材を育成することが不可欠。例えば医療・ヘルスケアでは理学療法士の数を増やすことも重要だが、その周辺でビジネスの価値を高める人をどう育成するかについて、知恵を絞るべき。
•高齢者の中でも、お金があり消費力がある人もおり、ここでビジネスを展開できるような人材育成の仕組みが必要。

守島委員(一橋大学大学院商学研究科教授)
•分厚い中間層という話は大切な概念だが、産業構造やニーズが変わっていく中で、一人の人間が中間層で居続けるためには、一生同じ職業や仕事の中だけで生きていくことはあり得ない。スキルをリニューアルすることが必要であり、そのためには、リカレント教育が必要。
•女性は、子育て期間の生産性が下がるが、心配せず仕事を離れられるような企業のサポート、キャリアの柔軟性が重要。
•グローバル人材については楠木委員の指摘通り、ポイントは教育機関。身近な話だが、私のゼミの学生は、就職先を大手金融業から製造業に変えた。理由は、金融業がグローバル化していないからだった。若者はグローバル化の必要性を自覚し実践しているので、まずは、大学生の間に海外に行けるチャンスを作ってあげることが重要。企業は、グローバルな志向と能力を持った学生を採用した場合には、その芽を潰してはならない。

北原委員(医療法人KNI理事長)
•医療は、本来は良い労働環境である。同一労働同一賃金である上、保育なども充実している。また、教育が職業に直結しており、国際競争力においても決して諸外国に引けをとらない。にもかかわらず、医療現場は慢性的な人手不足で、疲弊しきっている。それはなぜか。
•現在看護師、介護福祉士の養成定員は1学年につき10万人。これに対し、今年成人を迎えた人は120万人だが、それ以下の年齢層はもっと少なく、15歳以下では1学年100万人足らずである。すなわち若い世代においては人口の約1割が看護・介護士教育を受けているわけであり、本来なら人手が不足するはずがない。また、医師の養成定員は1学年で1万人。これも人口に対する割合からすれば、諸外国に比べて図抜けて多い。にもかかわらず現場が慢性的な人手不足に陥っているのは、医療費の引き締めにより最低限の給与さえ支払われていないからである。
•医療費は国民皆保険を守らんがために国によって低めに抑えられ、民間医療の担い手である医療法人は営利事業や海外展開が禁止されている。資本主義国家の中で、医療のみが共産主義的仕組みよって縛られていることが様々な矛盾、問題を引き起こしている。
•一方逆に共産主義体制を取るキューバにおいては、医療は最大の産業と考えられている。人口が1100万人強なのにも関わらず、医学部の定員はなんと1学年3万人。日本ではかつて医師が増えれば総医療費が上昇し、国が滅びる、とまことしやかに語られていたが、キューバは養成した医師を世界64カ国に派遣し、特に産油国などでは多額の報酬を受け取って、このお金で自国民には無料で医療を提供している。更に貧しい国に対しては無償の医療援助を行うことで恩を売り、国際環境の中で独自の地位を築いてきた。
•最近キューバは、先進国の3分の1の価格で医療機器や医薬品を製造して、中南米に輸出している。これまでは、新薬を作ることが出来たのは日米欧だけだったが、キューバが新薬製造国に名を連ねてきたのは驚きである。また、キューバはこれまで医療協力の一環として、第三世界から優秀な人材を集めて無料で医療教育を施していたが、最近ではその人材を通じてキューバの安価な医療機器を世界に広め、外貨を獲得している模様だ。
•現状、医療の産業化という面で、共産主義国であるキューバにさえ遅れをとった日本であるが、日本の医療は総合的に見ると水準が高く、世界には日本の医療を求めるニーズが間違いなしに存在する。周辺産業ではなく、医療そのものも産業と考え、周辺産業とパッケージにして輸出していくことこそが、医療の閉塞的状況を打破するためには必要と考える。
•医療は、「人がいかに良く生きて、いかに良く死ぬか」、その全過程をプロデュースする総合生活産業。安全な衣食住や質の高い情報ネットワークの提供、さらには葬祭業さえ医療の一部。そう考えれば医療の視点からの産業の再編、経済の活性化も決して夢ではない。われわれは今年から農業に参入し、水耕栽培によって育てられた、付加価値の高い医療用の野菜を市場に供給する予定だが、これはTPP導入で衰退が危惧される日本農業に、問題解決の糸口を与える、そんなチャレンジといっても過言ではない。

宮島委員(日本テレビ放送網株式会社解説委員)
•せっかく国もお金を出して教育して育てた人材、特に女性が有効に活用されておらずもったいない。MBAを取得した女性、医学部を卒業した女性でも、専業主婦をしているケースがあり、仕事と子育ての両立が高すぎるハードルになっていることが原因。今は、環境や強い意志がないと両立が難しいため、もっと自然にだれでも育児と家事と仕事を両立できる環境整備が必要。家計収入も安定し、子どもをもうひとり持つ意欲や消費アップにもつながる。様々な制度を整えて、出来るだけ多くの女性が無理なく希望に応じて労働市場に出られるようにすべき。
•女性の視点が商品開発等に生きた例はあるが、これに留まらず、組織の根幹を支える部分にも参画できるようにすべき。資料に、女性の役員が1人以上いる企業は破綻確率を減らすといったデータもあり、経営の中心の近い立場にも女性の能力を活用することが重要。国際的に見て、日本企業は女性の役員就任率が低すぎる。
•女性を事実上、別の扱いをするのでなく、賃金なども同等の立場で扱うべき。
•男性と同じ教育を受け、そう変わらない形で働いてきた人は、出産後、マミートラックに移されると落胆が大きい。その結果もし、長く勤務して給料をもらえさえすればよいと思う女性が増えると、企業にとっても望ましくない。超ハードワーカーで役員を狙うか、そこそこで働くかの2択ではなく、その中間の選択肢が必要。
•目の前にいる女性を有効活用できない企業が、本当に海外の人材を活用できるのか。全体で見ると色々な能力を持つ人が競争しながら、活躍することがパイを広げ、日本経済の活性化に繋がると考えられる。

金井委員(株式会社良品計画代表取締役社長)
•この国がどういう社会を目指すのかを共有し、企業がビジョンを掲げ新しい市場・産業を創造していく。そこで、社員はどういうスキルを身につけていくのかが重要。弊社は、ハウスビジョンを掲げ、日本人の暮らし方を変えることを提言してきた。これを受け、非正規社員も建築やインテリアコーディネートを勉強し、それがこれまでになかった売上を生み出し、給料や処遇の改善につながる。こういった動きが重要。
•海外20カ国以上で商売をしており、日本から海外にマネージャーを送るが、日本人のマネージャーは専門性がない。日本人は色々な部署を経験して、日本人の部下を使うのはうまいが、外国人を使うのは苦手。このため、35歳くらいの課長級社員を三ヶ月程度、海外子会社に研修で送り出し、専門性を活かして、どうやって子会社の業績を改善するのかを学ばせている。
•北原委員がおっしゃった「いかに良く生きて、いかに良く死ぬか」というテーマは重要。具体的な表現の仕方は難しいが、介護は自分の身内を考えても大変。社会の構造をどう変えていのかは大きなテーマ。
•日本でベンチャーが育たないことは大きな課題。社会の空気も変えなければならない。ホリエモンは上場廃止になった一方で、オリンパスは上場が維持された。個人的には、犯したことの中身には、随分差があるのではないかと思う。この結果にはメディアを含めた社会の空気が影響しているのだろう。日本は若い方の抜け感に対する度量が狭い。

新浪委員(株式会社ローソン代表取締役社長)
•弊社では、2005年から新入社員の50%は女性と決め、ダイバーシティを高めてきた結果、現在女性が大活躍。ナチュラルローソンを苦労して作ってきたが、活躍している人の90%は女性。女性の活用をうまくしなければ企業が生き残れない状況になってきているので、女性活用に関して悲観はしていない。
•2009年からは、外国人を30%以上採用している。イノベーションを起こすためには違った因子が入った方がよい。
•前回はダブルインカムツーキッズと言ったが、最近はダブルインカムダブルチルドレン(DIDC)の方が言いやすい。DIDCで心が豊かになり、DIDCを実現するための副次的な効果として経済成長がある。経済成長のための経済成長ではなく、心の豊かさと経済成長の両方がないと本当の豊かさにはならない。
•山下公園で子供むけローソンを作ったところ、3世代が集まり豊かな空気が流れた。こういう社会を作って、それを支えるのが経済成長である。経済成長ありきの戦略は響かない。やはり、子供がいて、おじいちゃんおばあちゃんも喜ぶ社会が必要。
•経済成長だけを考えると東京で全部やった方がよい。地方は売り上げが少ない。しかし、生活は地方の方が豊かであり、数字にごまかされてはいけない。地方でも、コンパクトシティ化して、ある程度の規模になれば雇用が生まれ、雇用が生まれれば若い人も戻ってくる。日本の豊かさを考えるのであれば、地域の豊かさを享受し、その中で仕事を作るということも考えた方がよい。
•雇用法制を変え、定年を55歳に下げて、第二の人生設計を早めに行えるようにしてはどうか。高齢者のセカンドキャリアでは、給料よりも、活躍の場や人の役に立つ機会が重要。心の豊かさが増えれば、おそらく医療費も下がる。また、企業内の新陳代謝が進むことで、若い人たちの就職口が増え、活力が増える。定年を65歳にのばすことは愚の骨頂であり、若い世代の職が減りやる気を失わせてしまる。

森委員(株式会社森精機製作所取締役社長)
•三重県伊賀市にメイン工場があり2000人を雇用。うち800人くらいは若い社員。いろいろなコンビニに出店をお願いしたら、ローソンだけが出店してくれた。
•典型的なメーカーだが、産休育休取得の促進、世帯寮の提供など、会社としてやれることはやっている。他方で、女性社員の結婚式に出ると、新婦の母親から「結婚しても働かせてもらって申し訳ありません」と言われる。会社としては結婚しても働いて欲しいが、60歳くらいの女性の間では、いまだに寿退社する感覚が残っており、世間の雰囲気を変えていかねばならない。
•ドイツの会社に出資して監査役をやっているが、フランスと同様に、ドイツでも女性幹部の法定割合を定めようとしている。日本でも、例えば、「2020年にはボードメンバーに少なくとも1人は女性を入れるべき」と政府が一律に定めるなどして、世間を変えて欲しい。女性幹部を登用する準備はできている。ただし、日本では工学部に入る女性が少ないので、3分の1位は女性が来るようになってしてほしい。

楠木委員(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
•一橋大学の国際企業戦略研究科にはアジアからの留学生が多い。彼らが日本に留学する第一の理由は、成熟。日本の安心・安全、細やかさは、海外の人にとって魅力的。成熟は価値であり、成熟のための成長という打ち出し方には意味があるのではないか。

秋山委員(株式会社サキコーポレーション代表取締役社長)
•新浪委員が指摘した、心の豊かさと経済の豊かさのマッチングは、日本で住んでいる人の多くが望んでいること。ただ、今回の部会では、「若い人たち頑張りなさい」と言うのも良いが、私たちも含めて、若い人に借金を作ってしまっているので、実行可能な絵を描くことがミッション。経済的豊かさと心の豊さのマッチングを目指しつつ、すでに予見可能な財政赤字等の問題について、次の世代の負担を軽くするためには、成長は不可欠ということも忘れてはいけない。

新浪委員(株式会社ローソン代表取締役社長)
•セカンドキャリア支援が必要。70~75歳になると、気の持ちようや、自分の“場”があいコミュニティーから、評価され必要とされることで病気にもなりにくい。70歳後まで働ける社会をどうつくっていくかを考えるべき。
•60歳以上の方はノウハウをお持ちなので、NPOやNGOで活躍できる。それらの場を拡げるためにももっと寄付税制の拡充をし、現在の“公共”の代わりをすることがコミュニティーの再生となるのでは。

森委員(株式会社森精機製作所取締役社長)
•資料中で東大の国際ランキングが30番目だが、工学部だけだと5番目。京大が9番目であり、そういう見方もある。
•寄付金について、国立大学の卒業生は寄付金が全額税額控除にならず、私学と格差がある。大学が法人化されても変わっていない。

伊藤部会長(東京大学大学院経済学研究科教授)
•新浪委員の指摘する、心の豊かさと経済の豊かさ、何のために経済成長するのかという事に関連して、投資の重要性を挙げたい。投資をしない社会は、将来に向かう活力を生み出すことができない。ハーバード大学のクリステンセン教授がビジネススクールを卒業する学生に、「ここに来る人は世間的には頭が多いが、20~30年後を見ると、自殺者や離婚者が多い。これは、大学の時に投資の重要性を学んでいないから。」と言った。
•論文を1本多く読んで職場での評価を少し上げることよりも、子どもや妻との会話など周り人との関係構築に時間を費やすことの方が、将来への豊かさへの投資になるかもしれない。目先の利く人ほど、ビジブルなものに目が行きやすい。本当に必要なものは長期間で不確かなもの。日本は投資効率がわからないために将来の豊かさに対して投資をしてこなかった。新浪委員が大胆に女性雇用を増やしたことは、まさに将来への投資。今後、こうした投資の流れをどう作っていくのかが重要。
•働くことの議論に関連して「働く」という言葉は英語では「Labor」、「Work」、「Play」の3つがある。産業革命による機械の発達で、人は過酷な肉体労働である「Labor」から解放され、機械を操作する「Work」を得たが、「Labor」を失った人は怒って機械を壊した。現在の日本ではイノベーションやグローバル化により「Work」が失われかけている。昔は、地方でも部品工場で真面目に働けば普通に生活ができたが、これからは難しくなるだろう。
•だからと言って、今後、「Work」をもう一度作ることが我々のやるべきことなのか。小澤征爾やイチローを「Player」と呼ぶ。北原さんの話には、「Player」的なイメージがある。「Labor」から「Worker」になるのには何十年という時間がかかった。対処療法として「Work」を維持することも考える必要があるが、将来的には並行して「Player」を生み出すことを考える必要がある。そのためには柔軟性を高め、画一主義から脱却することが必要なのではないか。

柏木委員(株式会社リクルート代表取締役社長)
•「経済や社会の色々なルールが変わってきており、今までの延長では産業は続かない」というのが、この部会のスタート。見えないことにチャレンジすることは、恐怖感があるが、それに対して国全体でどう取り組むか。
•弊社のビジネスモデルは、情報の不均衡が存在しているところで仲介することにあり、不均衡が解消されると、我々の仕事はいらなくなる。世の中の負の部分を探し、常に新たなビジネスを作り続けなければならないため、弊社には新事業創造人材が不可欠。
•弊社では、個人ではカバーしきれないリスクに対して、資金やノウハウを提供し、会社全体でサポートしている。毎年、新しいビジネスプランコンテストを実施しており、良いものがあれば、役員が全力でサポートして事業立ち上げに取り組んでいる。
•リスクをシェアしながら新しいチャレンジを支援し、豊かさを獲得する。日本の企業は、人材もノウハウも顧客も持っており、リスクにどう向かい合っていくか。成功例を具体的にどう作るか議論していきたい。

4.経済産業省政務三役締め括り挨拶

枝野経済産業大臣
•非常に楽しい時間を過ごさせていただき感謝。
•成熟のための成長、経済の豊かさだけでなく心の豊かさ、WorkerからPlayerの話を伺い、一部の新聞で「エダノミクス」と揶揄されたが、同じ方向の人がいることが分かったので安心した。経産省の会議でこうした議論がなされたことの意義は大きい。
•政府の縦割りについては何点か指摘されている。「第二の人生」、医療の産業化、国立大学への寄付控除等は重要な論点。厚労省と建設的な議論をしながら進めていきたい。
•サービス産業の生産性を向上させる事、新興国への学生や若手の送り出しについては、事務方に指示をして検討させたい。
•ベンチャーが育たない社会の空気を変えること、女性の活躍に向け世間や企業の意識を変えることは非常に重要。男女共同参画の部門や厚労省からは、こうした話があったが、経済産業政策の観点から取り組んでいくことが重要。本来、政治とは一定の方向性を示して国民を説得していくことであり、これは政務の役割。今日の議論を踏まえて何ができるか検討したい。
•女性に関する議論は、総合職の女性に関する議論が中心で、一般職や収入の低い女性に関する議論も必要。今後ともよろしくお願いしたい。

中根経済産業大臣政務官
•すばらしい議論を拝聴し、有意義な時間を過ごさせていただいた。
•医療が産業として成り立つということを強調されていた。厚労省の保険分野と対立する概念でもあると思うが、医療分野を産業として成長させていくという視点は重要。
•成熟さが日本の魅力ということに感銘を受けた。お金の幸せだけではなく、病気でも障害でも貧困であっても、幸せを感じられる国に日本が成長していければ良いと思う。高齢者であれば、豊かな高齢者の市場を開拓し、そこをターゲットにした産業が発展していく。また、外国人に対するおもてなしで、観光産業を引っ張っていく。
•貧困の連鎖を断ち切る意味で、貧困が学歴に大いに関わる。誰でも学校で十分に学ぶことができ、若いうちから持っている能力を発揮できるようにすべきと思う。
•DIDCが望ましいのであれば、女性が働きやすい環境作りが、政治に求められていると感じた。私の場合、妻は幼稚園の先生で、家には障害を持った子供がいるため、「家政婦さんがいたら助かるのに」と妻に言われる。このような労働市場は存在しており、色々な助け合いの必要性を感じた。

以上

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