秋入学、4国公立大では 学長らに聞く 『朝日新聞』新潟版2012年2月21日付

『朝日新聞』新潟版2012年2月21日付

秋入学、4国公立大では 学長らに聞く

 東京大学が「秋入学」への全面移行案を打ち出した。新潟大も検討組織の設置を表明するなど、県内教育界にも波紋を広げている。秋入学を検討する動きをどう評価し、大学の国際化にどう取り組むのか。県内の主な国公立4大学の学長らに聞いた。

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■新潟大

 新潟大の下條文武学長は今月1日にさっそく、秋入学導入について「前向きに検討すべく、専門部会を立ち上げたい」との考えを明らかにした。

 同大は2008年、留学生を増やすことなどを狙って、入学者や企業の意向を把握するため、秋入学を検討するワーキンググループを立ち上げて、情報収集をしたことがある。全国の高校421校を訪ね、同大卒業生が就職した企業63社にアンケートをしたが、「将来の課題とする」との結論にとどまった。

 今回、再び検討を始めるのは、「経済、産業界が支援する動きを見せている。見ているだけではなく前向きに検討しようと思った」(下條学長)からだという。(高岡佐也子)

■長岡技科大

 国際化が進む長岡技術科学大の新原晧一学長は「秋入学は国際化の面で利点があり、反対ではない」と考えている。

 同大では学部の学生の8%が留学生、大学院は15~17%。「東大などが目標とする留学生比率は達成している」。学部は機械系など7科目で留学生向けに英語による授業があり、大学院は英語による授業のみで修了もできる。

 ただ、高専からの編入者が8割を占める同大には「高専生が卒業後半年を経て編入を志すか」という疑問もある。現状では、学内で検討を始める環境はまだ整っていないが、新原学長は特に企業の動向を重視しながら、「東大などの検討の流れを注視していく」という。(松本英仁)

■上越教育大

 「教員養成の単科大学という性格上、教員採用の日程などから現時点では秋入学は考えていない」。上越教育大の加藤泰樹副学長はそう語る。「学校、地域の仕組みが変わらないと学生たちが困るかもしれない」

 同大にいる留学生は2010年度は40人で、ほとんどが大学院生。海外との教員免許制度の違いなどが背景にあるようだ。

 ただ「国際化」には前向きだ。毎年、約2週間の海外研修をし、英語による授業もある。

 加藤副学長は「教育の中でも国際感覚を持たないといけない。同じ教員養成の大学と共通理解を深め、社会情勢、社会の仕組みの変化によっては今後、考えていくことになると思う」と話す。(上嶋紀雄)

■県立大

 秋入学という形より、教育内容の改革が先決、という考え方もある。

 「秋入学は形式として一つの選択肢。大学教育の改革のきっかけにはなる」と県立大の猪口孝学長。「留学生、日本の学生にかかわりなくやる方向に教育の質を持っていく『中身』の議論の方が重要だ」

 09年開学の県立大は留学生を受け入れておらず、学生の海外派遣も最大約50日の語学研修がほとんどだ。

 国際地域学部はグローバル化に対応できる人材の育成を掲げ、語学教育に力を注ぐ。教授陣約80人のうち少なくとも10人は英語で授業ができる。猪口学長は「留学生を出し、受け入れられるような施策を地道にとっていく」と話している。(吉武祐)

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