[公務員給与削減] 大局的見地から論議を『南日本新聞』社説2012年2月15日付

『南日本新聞』社説2012年2月15日付

[公務員給与削減] 大局的見地から論議を

 国家公務員給与削減をめぐる民主、自民、公明3党の与野党協議が難航している。民主党が給与削減臨時特例法案と労働協約締結権付与の関連法案をセットで成立させるよう要求、自公両党が難色を示しているためだ。

 国家公務員給与や勤務条件は「財政民主主義」の観点から国会の議決で決定すべきとされる。国会、特に3党の果たすべき役割は大きい。

 だが、与野党協議を見る限り、駆け引きに終始している印象は否めない。3党は党利党略でなく公務員制度改革全体を推進する方向で、給与削減問題に取り組むべきだ。

 3党は昨年9月、人事院が0.23%引き下げを求めた給与勧告の実施と、2012、13年度に平均7.8%削減で合意している。

 しかし、人事院勧告の引き下げ時期で「今年3月から」とする民主党と、「11年4月にさかのぼって実施」とする自公両党と対立している。地方公務員の給与削減でも、自治体の判断に委ねるとする民主党と、減額を準用させようと主張する両党とは平行線をたどっている。

 最大の対立点は、給与や労働条件などを労使協議で決められる労働協約締結権の付与問題に違いない。

 政府は連合系職員労働組合との交渉で、締結権付与と給与大幅引き下げのセットでの実施で合意した。だが、自民党は労働協約締結権を付与すれば人件費が結果的に膨らむと警戒、反対の姿勢を崩していない。

 08年に成立した「国家公務員制度改革基本法」は、労働協約締結権付与を前提に、政府に対して「国民に開かれた自律的労使関係制度を措置」することを求めている。当時は自公政権だった。両党はその経緯を忘れていないはずだ。

 最近になり公明党は、締結権付与を含む公務員制度改革関連法案の審議を容認する考えを示した。だが、自民党は反対の姿勢を崩していない。法案審議に応じないのは責任放棄と言われても反論できまい。

 政府・与党は社会保障と税の一体改革で消費増税方針を決めた。東日本大震災の復興に伴う増税も来年から本格的に始まる。増税ラッシュの中で国民が求めるのは国会議員、国家公務員らの身を切る改革だ。

 給与削減特例法案が成立すれば、年間で2900億円が浮き、復興財源に充てられる。危機的状況の財政をどう補いつつ、被災地復興に当たるかの大局的見地で法案審議を進め、合意に導く姿勢が重要である。

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