大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ『朝日新聞』2012年2月16日付

『朝日新聞』2012年2月16日付

大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ

 日本の大学生は勉強しない――。そんな汚名を返上しようと、文部科学省は、現役学生向けの「共通テスト」を開発する検討に入った。入学後と卒業前に2度受験すれば、在学中の学習成果の伸びが客観的にわかるようにする。結果を分析してカリキュラムの改善に役立てたい考えだ。

 大学生の「能力測定」と位置づけ、年に1回、読解力、論理的思考力、批判的な思考力、文章表現力などを問うことを想定。大学の講義にどれくらい主体的に参加しているかといった学習態度のアンケートも課す。同じ学生が2度受ければ、成長度を「可視化」できると期待する。

 対象は全国の大学。大学として参加するかどうか、何人の学生を受験させるかなどは、各大学の判断に任せる。文科省は、伸びが著しい大学の取り組みを公表するよう促すなど、成果重視の仕組みを作る。文科相の諮問機関である中央教育審議会の大学教育部会で具体的な検討を進める。

 文科省によると、米国インディアナ大学は、学生が教員や他の学生とどう関わり、しっかり学習しているかどうかなどを評価する調査方法を開発。この調査に米国とカナダの1千校以上が参加し、経年比較や大学間の比較に使っている。米国では、学士課程前半の一般教育の到達度として、文章表現力や数学的能力を問うテストもしている。同省はそれらの事例も参考にしたいという。

 日本の大学生の平均学習時間は1日4.6時間。1日8時間程度とされる欧米と大きな差がある。授業などを除いた1年生の学習時間をみると、日本の学生の半数以上が週5時間以下だ=グラフ。また、日本の大学教員は受け持つ講義のコマ数が多いため、講義の準備時間が足りず、学生の興味を引くような講義をできていないとの指摘もある。学部や学科の「縦割り」がカリキュラムの体系化を阻んでいる面もある。

 文科省はそうした問題点を考慮し、グローバルに活躍する人材の育成のため、「学習時間の確保と学習密度の向上が必要」と判断。各学長から「学生が何を身につけたか」を重点的に聞き取る調査も初めて実施する方針だ。

 文科省の担当者は「個々の学生の能力を比べるためのものではない。共通のものさしで各大学が自らの『教育力』を把握し、改善につなげてほしい」と話している。(花野雄太)

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