東北広域連合/若者の政策提言を生かそう『河北新報』社説2012年2月6日付

『河北新報』社説2012年2月6日付

東北広域連合/若者の政策提言を生かそう

 東日本大震災後の東北像を描くのは誰か。復興に要する膨大な時間と労力、資金を考えれば、若い世代にこそ積極的に声を上げてほしい。

 「東北を一つに」を合言葉に、東北大公共政策大学院の学生たちが「東北広域連合の創設」に関する政策提言をまとめ、宮城県に提出した。

 私たちは震災前から、広域行政の必要性を訴えてきた。ヒト、モノ、カネ、情報が地球規模で往来する時代。東北が地域主権を確立し、自立的発展を遂げるためには「県域」ではなく「圏域」として凝集しなければならないと主張してきた。

 「1000年に1度」の大災害を受け、県境を越えた互助のシステム構築が喫緊の課題になっている。

 広域連携は「おらが県意識」が障害となって、ともするとできない理由を探す作業になりがちだ。だが、できることを今すぐやろう、という若者のチャレンジ精神は現状変革の起爆剤となるだろう。

 同大学院は公共政策の専門家などを養成する専門職大学院。20代の若者を中心にワークショップなどを通じて、地方自治体が抱える課題解決に向け、提言などを行っている。

 今回は学生7人が広域行政で取り組むべき(1)防災(2)医療(3)産業-の3分野、7項目を提案、広域連合の組織構成も示した。

 提言は広域連合の参加自治体として東北6県と政令市の仙台市を想定。国出先機関のうち、地方整備局、経済産業局、地方環境事務所の移管を求める。

 最大の特徴は、住民が連合のメリットを実感しやすい分野を中心に提言をまとめたことだ。

 大震災で支援物資の調達と分配業務に支障が出たことを踏まえ、連合自身が中核的な広域防災拠点を整備する必要性に言及。第1段階として、いわて花巻空港隣接地(北東北担当)、山形空港隣接地(南東北担当)を挙げた。

 各県が所有するドクターヘリを連合に移管、県境を越えて共同運航すれば、初期治療までの時間を最大10分短縮できるという。このほか、東北に遍在する地熱資源を共同開発する構想などが盛り込まれている。

 先行する関西広域連合は発足から1年を経過し、実績を着々と積み重ねている。構成7府県ごとに被災県を割り振る「カウンターパート」方式で、きめ細かい支援活動を展開してくれた。

 九州地方知事会と災害時相互応援協定を締結したほか、支援を受け入れる側に回った場合の態勢確立を目指して広域防災計画案も取りまとめた。

 震災で中断していた北海道東北地方知事会の「広域連携等に関する検討会議」がきょう、再開される。

 他ブロックに比べ「周回遅れ」の感が否めない東北の連携構想を推進するには、市民レベルの盛り上げが必要だ。各県知事は粗削りではあるが、その分、野心的な若者の声に耳を傾け、東北の一体化に向けて大胆にかじを切ってほしい。

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