『読売新聞』2012年1月22日付
茨城大に教育研究センター 工学部に4分野 中小企業と基礎研究
茨城大工学部(日立市)は25日、教育研究体制の強化や中小企業支援の充実を目指し、学部内のベテラン、若手の教員や大学院生らによる学科・専攻を横断した新組織「付属教育研究センター」を設置する。
中小企業とともに基礎研究などに取り組むほか、インターンシップなどで企業に協力してもらい、若手教員や学生に現場を経験させ、教育研究の質を向上させる。友田陽・工学部長にセンターの狙いなどを聞いた。(聞き手・富田智晃)
――設置の狙いは何か。
「工学部は教員や技術系職員、大学院生に、2年生以上の学部学生を加えると約2800人の研究集団で、もっと存在感があっていいはずなのに目立たない。社会貢献、教育、研究活動を一体的に強化し、外部に見える形にするため、しっかりした体制を整備したい。世界で戦える人材と中小企業の養成が目標だ」
――社会貢献にどう取り組むのか。
「地元金融機関に地域の中小企業をグループ化してニーズを把握してもらい、各センターにつないでもらう。各センターは企業が固定メンバー(維持企業会員)として加入した研究会を作り、長期にわたり密度の濃い産学連携を進める。地域のニーズを踏まえ、基礎研究のシーズ(新技術)を創出する。企業の人材育成、技術開発を大学側が包括的に担う形になる。中小企業が独自技術を持ち、大企業に提案できるようになってもらいたい」
――教育、研究面での特徴は何か。
「工学部は産業界で活躍する技術者を養成するのが使命だが、現場の実態を知らないで技術者教育はできない。若い教員に現場を見てもらうため企業に助けてもらう。外部講師として大学で講義をしてもらったり、若手教員や学生のインターンシップを受け入れてもらったりしたい」
「研究面では異分野の教員がチームを作り、組織的に対応する。個々の研究者は成果を出しているが、大学院レベルの優れた教育研究拠点に国が研究費を重点配分するグローバルCOE(卓越した拠点)プログラムに選ばれるようなプロジェクトなど、茨城大工学部の目玉研究を作りたい」
――センターでは具体的にどんな研究をするのか。
「例えば、塑性加工科学は今後も日本が世界と勝負していける得意分野だ。プレス加工製品の強度評価や、組織解析などの研究を進める。高度化防災セキュリティ技術では東日本大震災も踏まえ、周辺自治体に安全・安心な都市に向けた防災面での提案ができればと考えている。さらにIT分野でのセンターも設置に向けて取り組んでいる」
茨城大工学部は25日午後1時から、日立キャンパスで付属教育研究センターの発足シンポジウムを開く。元大阪大工学部長でJSTイノベーションプラザ大阪(大阪府和泉市)の豊田政男館長の特別講演に続き、4分野の各センター長が研究内容などを説明する。参加無料。問い合わせは茨城大工学部総務係(0294・38・5004)へ。