センター再試験 肥大した制度の見直しを『信濃毎日新聞』社説2012年1月22日付

『信濃毎日新聞』社説2012年1月22日付

センター再試験 肥大した制度の見直しを 

 大学入試センター試験の再試験が全国47会場で行われた。

 14日の試験の地理歴史と公民で問題冊子を配り忘れたミスを受けての処置である。過去最多の200人余が受験した。

 希望する大学や短大の2次試験に向け、少しでも多く時間を確保したい時期だろう。センターと会場を引き受けた大学は、初歩的なミスで受験生を動揺させたことを十分に反省し、再発防止に努めなければならない。

 今年は、これまで別々だった地理歴史と公民の試験時間を一緒にした。地歴と公民の計10科目から最大2科目を選ぶ方式を導入。地歴と公民二つの問題冊子が必要な受験生と、一つだけの受験生が混在する会場もあり、主に公民の冊子の配布を忘れたり、遅れたりするトラブルが相次いだ。

 センターの周知不足と大学の認識不足が原因と指摘されている。公民から解くはずの受験生が、地歴から手を付けざるを得ない事態が生じた。遅配で試験時間が延長された分、規定より長く解答できた受験生が出るなど、公平性への疑問も出ている。

 過去最悪の混乱になったためか、野田佳彦首相が対応を指示した。文部科学副大臣は、原因究明と再発防止のため作業チームを設ける考えを示している。

 今回の問題に限れば、地歴と公民の冊子を1冊にすれば済む。政府が問題意識を持っているのだから、センター試験のあり方そのものを見直してはどうか。

 共通1次試験に替わり、センター試験が始まったのは1990年。偏差値による“輪切り”で受験競争を助長してきた反省からだった。センター試験は、私大も参加し、受験科目は各大学が決めるようになった。入試の多様化も進み、一定の評価はできる。

 半面、1点刻みで合否を争う重圧に受験生がさらされる実態はあまり変わっていない。

 以前、旧大学審議会が提言したように、一定の点数を取れば大学入学の資格を得られる仕組みにできないか。必要な知識や適性は2次試験で判断する。センター試験を年に何回か行えば、受験生の負担感は軽くなるはずだ。

 試験の方式をコロコロと変えるのは望ましくない。受験する側も監督する側も理解しやすい内容にし、一定の期間は続けることで定着を図るべきだ。

 どのように改善するのであれ、センターと大学には緊張感が求められる。試験中に監督教員の携帯電話が鳴るようでは困る。

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