東大「秋入学に全面移行」案 中間報告、学内なお異論も『朝日新聞』2012年1月17日付

『朝日新聞』2012年1月17日付

東大「秋入学に全面移行」案 中間報告、学内なお異論も  

 入学時期のあり方を検討してきた東京大学のワーキンググループ(座長・清水孝雄副学長)は、従来の4月入学を全廃し、海外で主流である秋入学への全面移行を求める素案を中間報告としてまとめた。国際的な大学間の競争に対応し、学生の海外留学を促すことなどを理由に挙げている。

 東大は今後、この素案を元に各学部などで本格的に検討し、年度内の決定をめざす。学内の合意形成ができれば、経済界など関係先への説明を進め、告知期間を経て早ければ5年後に導入したい意向だ。ただ、学内には「最優先課題なのか」などの異論もあり、実現性は不透明だ。

 中間報告は、留学生の受け入れや送り出しの人数が海外有力大学に劣ることや、春学期(4~9月)の途中に夏休みが挟まることなどを、4月入学のデメリットとして指摘。秋入学に移行することで留学の機会が「確実に広がる」とした。4月入学と秋入学の両方を実施する複線化は、「コスト面で困難」として全面移行を求めている。すでに複線化している大学院については、検討を続ける。

 入試時期は従来通りとするため、入試で合格してから入学するまでに半年間のずれ(ギャップターム)が生まれる。この期間の使い方として、研究や勤労体験、ボランティア、国際交流など13項目を例示。「受験競争で染み付いた偏差値重視の価値観をリセット」し、教わる姿勢から学ぶ姿勢に転換する機会にする、としている。この期間の過ごし方に大学がどの程度関わるかは、今後の課題となる。

 一方、卒業時期は入学から4年後の秋と、その翌春の双方を併記した。卒業も秋になれば、企業の新卒一括採用との間にも時期のずれが生じる。各種の国家試験などと、時期がミスマッチにならないかも課題だ。有力大学の間では、秋入学の本格導入に慎重論も少なくない。

 このため東大は、秋入学の導入へ向けて学内の合意ができれば、他大学、社会、政府の幅広い理解と協力が大切だとして、特に企業には採用時期をずらすなどの対応を求めていく方針だ。

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 〈東大の秋入学検討〉 大学の国際化をめざす浜田純一総長の主導で、昨年4月に総長直轄のワーキンググループ「入学時期の在り方に関する懇談会」を設置。副学長2人や教授らで検討を進めてきた。今後、学内の議論を経て最終報告を出す。大学としての最終的な意思決定は、総長や理事らでつくる経営協議会などが行う。

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