『佐賀新聞』2011年12月28日付
「肝臓がん」に取り組む寄付講座 県が佐賀大学と協定
佐賀県は佐賀大学医学部と連携し、死亡率全国ワーストワンが続く肝臓がん対策に取り組む寄付講座を来年1月から設置する。講座では専従の医師らが肝疾患の研究を進めるとともに、医学部内に新設する「肝疾患センター」を軸に県内医療機関のネットワークを構築する。佐賀大で27日、協定締結式が開かれた。
寄付講座は学外からの寄付金で研究の活性化を図る制度で、県と佐賀大では地域医療支援、重粒子線治療に続き3講座目。今回の設置期間は2014年度末までで、1億750万円を寄付する。
講座では専従の医師3人を雇用し、新設する肝疾患センターで患者の検査結果や診療内容をデータベース化して一元管理する。それを参考に、専門医がいる県内8カ所の専門医療機関と、各市町のかかりつけ医のネットワークを整備。患者が県内のどこで受診しても、適切な治療を提供できる仕組みを構築する。
佐賀大によると、県内の肝がん患者の9割をB、C型ウイルスキャリアが占めるが、自覚症状がないため、検査を受けない人や陽性であっても放置して肝硬変や肝がんに進行するケースが多いことが課題となっている。
対策として、8カ所の専門医療機関と50カ所のかかりつけ医で、1人ずつ看護師や保健師を「肝炎コーディネーター」として養成。コーディネーターはウイルス検査を勧めて患者を掘り起こし、陽性者には治療を働きかける。
2010年の人口10万人当たりの肝がん死亡率は全国平均25・9人に対し、佐賀県は41・1人。12年連続でワーストワンを記録している。
協定を結んだ古川康知事は「時限的な講座だが、これを契機に医療体制を構築し、死亡率の改善につなげたい」と述べた。佛淵孝夫学長は「肝がんをターゲットに絞った今回の取り組みは成果が分かりやすい。汚名返上のため、県内の全医療機関で取り組んでいく」と意気込みを示した。