芸工大が統合断念  県、山形市の「拙速」見解受け『読売新聞』2011年12月23日付

『読売新聞』2011年12月23日付

芸工大が統合断念  県、山形市の「拙速」見解受け

 東北芸術工科大(山形市)と京都造形芸術大(京都市)が来年4月を目途としていた学校法人統合問題で、芸工大は22日、統合を断念する方針を明らかにした。県庁で同日開かれた芸工大の古沢茂堂副理事長と、吉村知事、市川昭男・山形市長との三者会談で、県と同市から「統合は拙速」との見解を示されたことを受けて判断した。29日の理事会で正式決定し、年明けにも文部科学省に提出していた統合に向けた認可申請を取り下げる。 

 会談は、統合問題への県と市の見解を芸工大に伝えるため、非公開で行われた。 

 古沢副理事長や県によると、吉村知事が、これまでの検討の経過を説明。「県、山形市としては来年4月の統合にこだわらず、改めて丁寧な説明を行い、理解を得た上で進めることを希望する」との見解を示した。 

 古沢副理事長は会談後、取材陣に対し、「同意しかねるとの返事だった。来年4月の統合は無理。時期を変えても難しい」と述べた。大学や短大の学校法人統合の手続きに、地元自治体の同意は義務付けられていないが、文科省は「地元の理解があることが望ましい」との見解を示しており、古沢副理事長は「統合の申請は取り下げることになるだろう」と説明した。 

 文科省によると、過去5年間に大学や短大の学校法人の統合申請は計22件あったが、法人側から取り下げた例はない。地元の理解が得られないことを理由にしたケースは「初めてではないか」としている。 

 今回の統合に事実上の「待った」をかけた理由について、吉村知事は臨時の記者会見で、「県、市の補助金を受けている公設民営の大学として、県民、市民の理解の上に立つことが大前提だが、現時点では不十分だ」と指摘。そのうえで、「統合そのものをはねつけたわけではなく、必要であれば、条件整備を図ってほしい」と説明した。

 また、市川市長も臨時の記者会見で、「市民の理解が不十分とする市議会の意見を踏まえて、市としての見解を出した」と話した。 

 統合に反対してきた「芸工大を愛する会」の早坂功会長は「断念は当然。議会で熱心に議論してもらい、知事、山形市長に賢明な判断をして頂いた」と話した。 

 両大学の学校法人統合を巡っては、少子化や運営基盤の強化を理由に、芸工大を運営する学校法人「東北芸術工科大」を解散。京都造形芸術大を運営する学校法人「瓜生山学園」(京都市)に吸収合併させ、新法人名を「芸術学舎」とする方針だった。 

 両大学は、学部・学科などの組織改編は行わないとして8月に文科省に認可を申請。統合が実現すれば、芸術系大学としては学生数が1万人を超える日本一の学校法人となる予定だった。 

 しかし、芸工大が設立時などに県や市から計約200億円の補助金を受けた「公設民営」大学だったため、統合を疑問視する声が続出。芸工大は県民向けの説明会や、県、市の質問書への回答などを通して、統合への理解を求めていた。

 

 

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com