福井大に無償貸与へ JR敦賀駅前ビル『読売新聞』福井版2011年11月30日付

『読売新聞』福井版2011年11月30日付

福井大に無償貸与へ JR敦賀駅前ビル

原子力研究所来春、入居予定 「優遇しすぎ」の声も

 福井県敦賀市がJR敦賀駅前に建設するビルに福井大付属国際原子力工学研究所(福井市)が移転する計画で、敦賀市は福井大から賃料を徴収しない方針を明らかにした。

 建物を無償で貸す関連議案を12月5日開会の12月市議会に提出する。しかし、一部の市議から「優遇しすぎ」「賃料を取るべき」と反対の声が上がっている。駅前の一等地で、建物整備費など約20億円も全額、市が負担しており、行政がどこまで研究機関を支えるべきなのか、議論を呼びそうだ。(島田喜行)

 同研究所は2009年4月、県の「エネルギー研究開発拠点化計画」の一環で原子力分野の教育・研究機能の充実を目的に福井大文京キャンパス(福井市文京)に開設された。現在、教員約30人、大学院生23人が研究活動をしている。日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」などの原子力施設があり、駅前の活性化にもつながるとして同年に敦賀市への移転方針が決まり、市は昨年9月からビルの建設を始めた。

 鉄筋3階建て延べ約7000平方メートルで、総工費は用地費1億380万円、工費17億7000万円などを含めて約20億円。市は、この移転新築事業に合わせて、国から「高速増殖炉サイクル技術研究開発推進交付金」20億円を受け取っており、これを原資に総工費をすべて市が支払う。大学側は、引っ越し代や移転後の光熱費などを負担する。

 ビルは12月中に完成する予定。福井大は名古屋大、大阪大、京都大との連携を視野に入れ、原子力防災も含め原子力について広範に学べる拠点を目指す。

 しかし、破格の厚遇に、複数の市議から異論が噴出。ある市議は「一大学のために市が建設費などを負担し、さらに賃料も取らないのはおかしい」。別の市議は「市内の同規模の建物と比較しても、賃料は月に100万円以上するのは明らか。市の施設を市民が利用する場合でも、料金を取られる。市民が日常的に使う施設ではないのに、なぜ大学だけ優遇するのか」と批判する。

 これに対し、市の担当者は「市が移転を要望した面もあり、費用を負担した。国の金で建てたので賃料をとるのはなじまない」「講演会を開くなど、よく考えれば、市民のための使用法もある。市民に十分還元できると思う」と説明。「福島第一原発の事故後、原子力の安全に関しての研究が重要視されている。敦賀市だけでなく、全世界にとって有益になる」と強調している。

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