『薬事日報』社説2011年11月25日付
魅力ある4年制大学院設置を
2006年度から始まった薬学教育6年制が完成年度に達し、来春には第1期生が卒業する。それを受けて設置される4年制の大学院博士課程が、来年4月から新たに始まる。どんな人材をどう育成し、社会でどのように活用していくのか。大学関係者の関心が高まっている。
薬学部新設大学を含め大学院薬学研究科課程を持つ各大学は、4年制大学院の設置を随時文部科学省に届け出ている。一定要件を満たせば許可を経ずに設立可能だ。10月末時点で29校の届出が受理された。今後、9~12月分の届出が段階的に受理され、来年2月末には総数がはっきりする。基本的に対象大学の全てが届け出る見込みだ。
一方、新たに大学院薬学研究科課程などを設置する大学は、文科省の大学設置・学校法人審議会による審議を経る必要がある。10月24日にその答申が出され、国際医療福祉大学、高崎健康福祉大学、城西国際大学、帝京平成大学、愛知学院大学、同志社女子大学、就実大学、広島国際大学、崇城大学、九州保健福祉大学の計10校が、4年制大学院設置「可」と判定された。
現在、薬系大学は全国に74校存在する。03年度以降に薬学部を新設したのは28校。このうち07年度以降に新設した7校を除く21校は、要件を整備すれば12年度に4年制大学院を設置できたが、間に合うのは13校と見られる。総合すると、12年度は60校弱が4年制大学院を持つ見通しだ。
各大学によって違いはあるが4年制大学院では基本的に、ファーマシスト・サイエンティストなどと称される薬剤師の育成が主眼になりそうだ。臨床現場を拠点に課題を見つけて研究を行う。論文を書いて博士号を得て、専門薬剤師を目指すことになるのだろう。こうした人材は大学病院や基幹病院を中心に一定のニーズはありそうだ。
もっとも、「単に専門薬剤師を育てるだけではいけない。医師と対等に話すためにも基礎薬学をどう教えるかが大事で、それに根ざした臨床薬剤師を育てないといけない」との声も大学教員から聞かれる。まさにその通りで、各大学は充実したカリキュラム構築を急ぐ必要がある。
私立大学では同課程を経て、薬学教育6年制を担う大学教員になってほしいとの思いも強い。製薬会社では、研究開発部門や、メディカル・サイエンス・リエゾンと呼ばれる高度な学術部門などでニーズがあるかもしれない。行政機関などレギュラトリーサイエンス関連分野の人材養成を期待する声もある。
どんな人材を育成するにせよ、大学院に進む学生がいないのでは話にならない。各大学の定員は概ね5人前後。総定員数は200人以上と予想され、従来に比べ大きな変化はないと見られる。薬学部で6年間学んだ上、4年間の大学院に進みたいという優秀な学生をどれだけ確保できるかが、 今後の焦点になるだろう。