『朝日新聞』福島版2011年11月23日付
福大の就職内定率低迷
●求人と希望、合致へ支援
福島大学の就職内定率が低迷している。震災と原発事故による内定の出遅れが背景にあるが、夏以降の求人には持ち直しの動きも出始めている。課題は、求人と学生の希望を合致させることだ。
「企業の採用が震災で2カ月ほど遅れたが、逆に今年は夏場を過ぎても求人があり、全体としては減っていない」。熱心に聴き入る親たちを前に、福島大就職支援室の南俊二室長は語りかけた。
大学がÙ月下旬に開いた「親のための就職セミナー」。毎年この時期にセミナーを開き、就職戦線の状況や大学の指導方針を説明するが、今年は震災や原発事故の影響を心配する保護者が多かったという。
同大の今春の就職率(希望者に占める割合)は86%と過去10年で最低だった。大学側が10月、就職を希望する4年生に個別調査したところ、採用内定者は5割で、最近になって6割に届いた。
就職支援室では「求人数は7月以降持ち直し、県内は昨年並みで県外は大幅増。ただ、復興に関係が深い土木・建築関係の職種や関西・中部など遠方の職場が目に付く」と分析する。
福島大の就職希望者は700人余り。例年、地元就職志望が強く、土木系の専攻分野はない。また、教員志望者が約100人おり、県教委が今年は小中学校の教員採用をやめたことも内定率の伸び悩みに影響しているようだ。
共生システム理工学類4年で会津若松市出身の加藤正稔さん(23)は、地元の企業と市役所、役場を受験したが採用されず、研究の合間にハローワークに通っている。「本格的な就職活動は卒業後になるかもしれない」と話す。
危機感を抱く大学側は新たな支援策として、就職試験の交通費として片道3千円を4回まで補助する制度を設けたほか、来年1月にも4年生向けに企業合同説明会を開く予定だ。
他大学も状況は芳しくない。今春の就職率が過去最低の91%だった会津大学は10月までの内定率が昨年と同じ6割余りだ。
いわき明星大学は昨年同期をやや下回っており、姉妹校の東京・明星大学と都内で2回、合同企業説明会を開いた。担当者は「原発関連の仕事は減ったが、製造業や県民の避難で人手不足の企業の求人が出てきた。前向きに支援したい」と話している。(渡辺康人)