江利川人事院総裁インタビュー 政府の給与削減法案を批判「懲戒処分と同じ」 政府敗訴の可能性にも言及 MSN産経ニュース配信記事2011年11月1日付

MSN産経ニュース配信記事2011年11月1日付

江利川人事院総裁インタビュー 政府の給与削減法案を批判「懲戒処分と同じ」 政府敗訴の可能性にも言及

 人事院の江利川毅総裁は31日、産経新聞のインタビューに応じ、政府が人事院勧告(人勧)を見送り、国家公務員の給与を平均7・8%削減する臨時特例法案を優先させたことについて「課長以上の職員は10%カットとなり懲戒処分の水準だ」と強く批判した。

 その上で「人勧は憲法上の制度であり、実施しなければ憲法上の疑義が発生する」と述べ、見送りは憲法違反であり、訴訟になれば政府が敗訴する可能性に言及。「そのリスクを冒してまで制度を守らないのはどうか」と疑問を呈した。

 人事院廃止を含む公務員制度改革については「国権の最高機関の判断ならば従うが、与野党が賛成する改革をしてもらいたい」と早急な議論を牽(けん)制(せい)した。

 政府は10月28日、国家公務員給与の平均0・23%引き下げを求めた人事院勧告の見送りを閣議決定。臨時特例法案は平成25年度までの時限措置として5~10%の給与削減を規定する。

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江利川インタビュー詳報

 --国家公務員給与を平均0・23%引き下げる人事院勧告(人勧)の見送りについて政府は「臨時特例法案が人勧を内包している」と説明するが

 「国家公務員はその職務の公共性などから憲法に規定された労働基本権が制約されており、人勧はその代償措置だ。それによって全体として『合憲』とされている。そのため人事院では、民間の給与を毎年調査して勧告をしている。

 ところが、特例法案は東日本大震災からの復興財源を確保するために給与の一部を削減するものなので趣旨や目的が全く異なる。両者はそもそも『内包する』とか『しない』などという関係ではない」

 --人勧の実施見送りは「憲法違反」との指摘もある一方、梶田信一郎内閣法制局長官は「憲法の趣旨に反するとは断定できない」としている

 「昭和57年に4・58%の給与引き上げを求める人勧の実施が見送られた際には訴訟に発展し、最高裁は違憲ではないと判示した。ただ、判決では、政府があくまで人勧を尊重しようとし、危機的な財政状況の中で生産者米価抑制や年金・恩給の物価スライドの停止などを実施した上での見送りだったことを指摘している。つまり見送らざるを得ない事情があったと。だが、今回は人勧を実施できるのにしていない」

 --復興財源に充てるため給与を引き下げるということは理解できるか

 「今回のような千年に一度の未曽有の災害の場合、やむを得ないことだと考えている。ただ、人勧は憲法上の制度であり、実施しなければ憲法上の疑義が発生する。仮に特例法案が成立して訴訟になったとき、もし『違憲』と判断されれば政府は給与の差額を支払わなければならない。そのリスクを冒してまで制度を守らないのはどうか」

 --特例法案による給与の下げ幅については

 「未曽有の国難に対応するということであっても、給与削減の水準については判例や先例に照らし、しかるべき水準があると考える。特例法案では、課長職相当以上の職員については10%のカットということになっているが、それは懲戒処分の水準だ。内閣や国会は適切な水準を考えていただきたい」

 --人事院の廃止や国家公務員への労働協約締結権付与などを柱とした公務員制度改革関連法案も提出されている

 「それは立法政策なので、国権の最高機関の判断となれば、行政執行部門として当然それに従わなければならない。ただ、与野党が入れ替わるたびに制度が変わるのでは安定しない。与野党含めて賛成されるような改革をしてもらいたい」

     (力武崇樹)

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