国会は公務員給与下げに動け『日本経済新聞』社説2011年11月7日付

『日本経済新聞』社説2011年11月7日付

国会は公務員給与下げに動け

 国家公務員の給与を引き下げる特例法案の取り扱いが、今国会の焦点になっている。

 政府は国家公務員の給与を平均0.23%下げるよう求めた人事院勧告(人勧)の実施を見送り、公務員給与を2013年度末まで平均で約7.8%引き下げる特例法案の成立を目指している。

 この特例法が成立すれば年間で2900億円捻出できる。政府は2年間分に相当する約6000億円を東日本大震災の復興財源にあてる方針だ。所得税の増税などで納税者に負担を求める以上、政府自らが身を切る姿勢を示すのは当然である。人勧を上回る給与の削減はやむを得まい。

 菅前内閣が特例法案を提出する際、民主党の有力支持組織である連合に、国家公務員に協約締結権を与えるなどの内容を盛り込んだ国家公務員制度改革関連法案とセットで成立させることを約束した経緯がある。

 しかし野党第1党の自民党には協約締結権付与に強い慎重論があり、同時成立にこだわると法案審議の道筋がつかなくなる。公務員制度改革関連法案は詰めるべき論点も多く、時間をかけて審議する必要がある。政府は公務員制度改革関連法案とは切り離し、特例法案の成立を優先させるべきだ。

 菅前内閣は地方公務員給与について、国の給与削減を前提にした措置はとらない方針も組合に示したが、これは納得がいかない。地方公務員給与は従来、国に準じる形で決まっており、今回だけ例外扱いにする理由は乏しい。

 地方公務員給与を国家公務員並みに減らすと、地方交付税を最大6000億円減らせるなどの財政上の効果が出る。これらを復興財源にあてれば、増税額を圧縮することも可能になる。

 自民党は人勧見送りを「憲法違反」と批判する一方で、人勧を実施したうえでさらに深掘りするよう主張している。人勧とともに、約7.8%の給与引き下げを実施するのも一案だろう。国会で建設的な議論を望みたい。

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