「納得できる就職」へ 大学支援も多様化『神戸新聞』2011年11月7日付 

『神戸新聞』2011年11月7日付

「納得できる就職」へ 大学支援も多様化 

 大学生の就職活動の支援に向けた動きが多様化している。セミナー情報や業種の選び方などを支援するキャリアセンターはここ10年で一般的になったが、雇用情勢に明るさが見えない中、外部のコンサルタントと協力して、模擬就活講座を開いた大学も。学生や保護者が求める「就職に強い大学」に向け、あの手この手で知恵を絞る。(黒川裕生)

◆コンサル呼んで模擬就活…甲南大

 「配属はどのように決まりますか」「仕事で一番つらかったことは」

 10月中旬、神戸市東灘区の甲南大学。大教室を埋めた200人の学生が次々と挙手し、壇上のキャリアコンサルタントに質問する。

 3年生向けの5回集中講座「モギ就」の一こまだ。受講する学生は、講座用に作られたサイトに自身の情報を登録し、会社説明を経て、エントリーシート提出と実際の就活に沿った形で進む。適性検査、面接の回も設けられた。

 この日は、OB訪問の際に評価されるポイントや注意点などを学んだ。「御社の中長期計画は」と尋ねた学生は「入社数年のOBへの質問ではない」と注意され、「女性の職場環境」を聞いた男子学生は「質問の意図が不明」と容赦ない批判を受けた。

 モギ就は同大と起業や就労支援に取り組むコンサルが共同で初めて実施した。OBでもあるコンサルタントの本田勝裕さん(49)らを講師に迎えた講義は、授業というより就活のシミュレーション。教室には本番に近い緊張感が漂い「受け身ではあかんよ」「発言がないとそもそも評価のしようがない」など厳しい助言が飛んだ。

 OB訪問の回で、話を聞く姿勢と表情を褒められた法学部3年の男子学生(22)は「友人に誘われて軽い気持ちで参加したけど、採用担当者にそんなところまで見られるなんて」とあらためて気を引き締めた。

 同大キャリアセンターの秋山祐亮さんは「就活に熱中するあまり、学業がおろそかになるのではという懸念は当然あるが、スムーズに就職を決められるよう後押ししたい」と話す。

◆学生自らセミナー企画…神戸大

 「大学側の支援が不十分」として、学生自らが業界セミナーやOB交流会を独自に企画、運営する動きもある。2005年度に発足した神戸大学の学生でつくる「六甲台学生評議会キャリア支援企画室」だ。企業の人事担当者と交渉を重ね、10年度のセミナーには商社や銀行、鉄道など99社を招いた。

 前代表で大手商社への就職が内定している法学部4年の松浦雄一さん(22)は「自分の就活は後回しになったが、やりがいは大きい」と話す。企画説明など企業の担当者とのやり取りの中で得られるものは貴重だったといい、「さまざまな業種の社会人と話すことができ鍛えられた」と振り返る。

 同大にキャリアセンターができたのは07年。センター長で同大大学院国際文化学研究科の内田正博教授(63)によると、10年ほど前は就活支援という視点がなく、「実務は厚生課の職員1人」という状況だったという。

 学生らの要望を受け、それまでゼミや学部単位などバラバラだった就職関連情報をまとめて学生に提供するキャリア支援を02年に開始。キャリアセンター開設後は、企業説明会や内定者交流会など、学内で行われる年間200ほどのプログラムを網羅している。

 内田教授は「自分で納得のできる就活にしてもらうため、大学としても協力は惜しまない」と話す。

大学生の就職活動 文部科学省と厚生労働省の調査では、2011年4月1日時点の大学生の就職内定率は前年同期比0・7ポイント減の91・1%。1996年度の調査開始以来、2000年と並ぶ最低水準。雇用情勢が厳しい中、就職活動の長期化を是正するため、経団連が「倫理憲章」を改定。多くの企業が3年生の10月ごろから始めている会社説明会などの広報活動を、本年度から3年生の12月1日を開始日と定めた。

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