小中教職員の給与、最大1200億円削減 財務省検討『日本経済新聞』2011年10月26日付

『日本経済新聞』2011年10月26日付

小中教職員の給与、最大1200億円削減 財務省検討

 財務省は2012年度予算編成で、公立小中学校の教職員の給与を引き下げる方向で検討に入った。教職員給与の3分の1を賄う義務教育費国庫負担金を最大で1200億円削減する考え。国家公務員給与の大幅削減にあわせ、独立行政法人の職員や地方公務員の人件費なども見直し対象とする。歳出削減を徹底する姿勢を示し、東日本大震災の復興増税への理解を求める考えだが、調整は難航も予想される。

 人件費の削減は国家公務員の給与を平均で約7.8%引き下げる特例法案の今国会成立が前提。財務省は国家公務員給与削減に合わせ、地方など行政機関の人件費も軒並み削減する構え。

 義務教育費国庫負担金は約70万人の公立小中学校の教職員の給与をもとに算出しており、11年度予算では1兆5666億円を計上。国家公務員給与と同率の7.8%で削減すると、負担金は最大1200億円削減できる。総務省統計では10年の小中学校教職員の月額給与の平均は約42万8千円であり、3万3千円ほど削られる計算となる。

 少子化の影響で児童生徒数は減っているが、教育関連予算はここ数年は4兆円前後で大きく減っていない。11年度の地方公務員数は全体では前年度よりも2万6千人減ったが、小中学校の教職員は2千人増えた。教職員の給与水準が適正かどうかなどを巡って、財務省は今後、文部科学省との調整を急ぐ。

 国との関係が深い独立行政法人の職員についても国と横並びの削減を求める。11年度に一般会計と特別会計を合わせて独法に1兆5108億円支出している運営費交付金を、人件費の割合に見合った分だけ減らす。特殊法人についても補助金削減の対象になる団体の選定を急ぐ。

 さらに地方公務員給与に関しても国家公務員と同等の削減率を当てはめて抑制する。給与にあたる分の地方交付税を最大で6000億円減らす見通しだ。

 財務省が教職員や地方自治体の人件費削減を求める背景には、「国家公務員給与が大幅に下がる以上、関係機関の人件費も圧縮すべきだ」との思惑がある。25日午前に開いた給与関係閣僚会議では、国家公務員給与の平均0.23%引き下げを求めた人事院勧告(人勧)を事実上無視する異例の決断。復興増税や消費税論議を前に身を切る姿勢をアピールした。

 ただ教職員給与の大幅削減には、民主党の支持組織である日教組の反発も予想され、実現は簡単ではない。国の支給が減った場合でも、自治体がほかの経費を削って人件費を維持する可能性もある。川端達夫総務相は25日の記者会見で地方公務員給与について「地方は地方で考えてほしい」と指摘。自治体の判断を尊重する考えを示した。

 復興財源との兼ね合いも焦点だ。政府・与党は国家公務員人件費の削減が実現した場合、給与削減で浮く2900億円を復興財源に充てる方針だが、教職員や地方公務員の削減分の使い道は決まっていない。財務省はこれを財政再建に生かす考えだが、増税幅圧縮のため復興財源に回すよう求める声が強まる公算は大きい。

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