『秋田魁新報』社説2011年10月4日付
秋田大「鉱山」100年 時代のニーズに挑戦を
秋田大工学資源学部は今年、創立100周年を迎えた。1910(明治43)年開校の秋田鉱山専門学校が前身。鉱山は一時過去のものといわれたが、その技術を応用した金属資源のリサイクル、新エネルギーといった分野はいまや時代の最先端だ。人材育成を通じた国際貢献など新たな役割が期待される。
本県はかつて国内有数の鉱山県だった。そうした地域性を背景に鉱山専門学校は鉱山技術者養成機関として誕生、他にない特色ある学部として資源分野の人材を養成してきた。県内では94年を最後に全ての鉱山が閉山。秋田大鉱山学部は98年に現在の学部に改組再編された。
改組後も資源に関する教育研究を継続した先見性は、高く評価されよう。金属資源のリサイクルは地球環境問題の観点から見直され、時代が求める研究分野として再び脚光を浴びるようになったからだ。
含有金属の種類が多く処理が難しいとされる「黒鉱」を製錬する技術は、県内の企業に蓄積されてきた。これが多種多様な金属を含む電子機器の処理につながる。「都市鉱山」と呼ばれる小型家電のリサイクルだ。そこから回収される貴金属やレアメタル(希少金属)は、有望な資源として注目されている。
さらに昨年秋の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を受け、中国が一時的に日本へのレアアース(希土類)輸出を制限したことは、資源を持たない日本の厳しい現実を浮き彫りにした。産業の生命線である資源供給を特定の国に依存することへ危機感が高まったのは当然のことだ。
不燃物として埋め立て処分されている廃棄家電から有益な資源を取り出す技術の向上が急がれるが、その鍵は産学連携が握っているといえる。2009年春に開設されたDOWAホールディングスの寄付講座は、産学連携を強力に推進する存在として期待されよう。
一方、同年秋に開設された国際資源学教育研究センターは、技術協力や資源開発で国際的に活躍できる人材の育成に取り組む拠点施設だ。アフリカやアジアの資源保有国などと人的ネットワーク構築を図る狙いもあり、受講生も受け入れている。
ボツワナ、モンゴル、カザフスタンの大学とは共同研究やカリキュラム協定を結ぶなど、世界的視野に立った研究環境が整いつつあるのも強みだろう。資源保有国の資源開発技術者の養成に貢献することは、資源の安定確保につながる。人材養成機関として発展すれば、そこで学んだ学生が海外に飛躍するチャンスも広がるはずだ。
化石燃料から地熱、風力、太陽光といった自然エネルギー利用への転換も時代が求める大きな課題だ。新エネルギー分野に関する研究開発も含めて工学資源学部の技術的、学問的な蓄積を生かす場は無限に広がっており、今後もチャレンジ精神を大いに発揮してもらいたい。