国家公務員給与 人勧だけの削減では不十分だ『読売新聞』社説2011年10月1日付

『読売新聞』社説2011年10月1日付

国家公務員給与 人勧だけの削減では不十分だ

 国民に復興増税を求める以上、政府が公務員の人件費削減に最大限努力するのは当然だろう。

 人事院が2011年度国家公務員一般職給与について月給を平均0・23%引き下げ、ボーナスは据え置くよう内閣と国会に勧告した。この通り実施されれば、国の人件費は120億円程度削減できる。

 人事院勧告(人勧)は、国家公務員が労働基本権を制約されていることへの代償措置である。歴代内閣は勧告を尊重してきた。勧告を実施するには、11月中の給与法改正が必要となる。

 ただ、今回は例年と事情が全く異なる。政府が、民主党の政権公約(マニフェスト)に掲げた国家公務員人件費2割削減を実現するために、国家公務員給与削減法案を国会に提出しているからだ。

 給与削減法案は13年度末までに限って、一般職の給与を5~10%、ボーナスは一律10%削減する。民主党の支持団体である連合系労組との交渉で内容を妥結し、6月に法案を提出した。

 人勧よりはるかに削減幅が大きい。年に人件費約2900億円を削減できるという。

 政府・民主党が決定した、震災復興費を賄う臨時増税案の歳出削減策には、公務員人件費の見直しとして、2年間で6000億円が既に見積もられている。

 国民が増税で復興に協力しようという時に、公務員の人件費削減は避けられまい。給与削減法案の成立は、復興財源を確保する観点からも望ましいのである。
 
 だが、10月に召集される次期臨時国会で、法案が成立するメドは立っていない。問題は、政府が給与削減法案を労働組合側と交渉した際、国家公務員制度改革関連法案との同時成立を目指すと合意したことにある。
 
 制度改革関連法案は、国家公務員に労働基本権の一部を付与し、労使交渉で給与など勤務条件を決定することを可能にする。労組側が長年望んできた法案だ。
 
 これには、自民党などに反対論が根強い。民間企業なら労組の要求も自おのずと会社の経営状況を踏まえた範囲内となるが、倒産しない政府の場合、要求に歯止めが利かないという懸念が強いからだ。
 
 給与削減法案の成立を先行させれば、労組側の反発は必至だ。人勧を無視すると、憲法上の問題が生じるとの指摘もある。 

 人勧を尊重するのが原則の現行法制度の中で、大幅な人件費削減を実現しなければならない。野田首相の調整力が試される。

 

(2011年10月1日01時05分 読売新聞)

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