新司法試験 合格者増へ法科大学院改革を『読売新聞』社説2011年9月15日付

『読売新聞』社説2011年9月15日付

新司法試験 合格者増へ法科大学院改革を

 法科大学院を修了しても法律家への道が開けない。その傾向が一層顕著になってきた。

 今年の新司法試験の合格者数は、昨年より11人少ない2063人にとどまった。合格率は23・54%で、2006年に新試験が始まって以来、5年連続で低下した。

 政府は9年前、2010年をメドに合格者を3000人にまで増やすことを閣議決定したが、今回も目標に遠く及ばなかった。

 もともと司法制度改革は、橋本内閣以降、公務員を減らし、行政による事前規制型社会を司法による事後救済型社会に変えていくという狙いから、行政改革と並行して進められてきた。

 国民にとっても、日常生活のトラブルなどを手軽に相談できる「身近な司法」を実現させ、様々な権利を守る「頼りがいのある司法」へ進化させていく機会だ。

 こうした国家の制度設計の目的を達成するには、弁護士など法曹人口の大幅増が欠かせない。東日本大震災に関わる法的トラブルの解決にも、これまで以上に法律家の手が必要となる。

 新司法試験の合格者数を出来るだけ早期に3000人にまで引き上げることが大切だ。

 それに向け、最優先で取り組むべきは法科大学院改革である。

 74の大学院が乱立し、入学の間口が広くなった。司法試験の合格者数で低迷する大学院が増え、そうした大学院には学生も集まらないという悪循環に陥っている。

 姫路独協大の法科大学院は今年度から学生募集を停止した。桐蔭横浜大法科大学院と大宮法科大学院の統合も決まっている。

 今後も統廃合による淘汰(とうた)は、避けられまい。

 実務教育を重視し、即戦力の法律家を養成するという設立理念の一方で、法科大学院に、司法試験対策に特化した教育が認められていない現状にも問題がある。

 大学院生の最大の目標は司法試験に合格することだ。大学院側も経営上、多くの合格者を出し、実績をアピールする必要がある。

 理念と現実の溝を埋めるため、大学院のカリキュラムに今以上の独自性を認めるべきだろう。

 新司法試験の出題内容も再検討が必要だ。詰め込み型の勉強をしなければ受からなかった旧司法試験の反省から生まれた制度だが、現状はさほど変わっていない。

 新司法試験の所管は法務省、法科大学院は文部科学省だが、制度全体の改革には、両省の連携が何より重要だ。

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