『北海道新聞』社説2011年8月29日付
大学不正経理 徹底的に調査し根絶を
年度内に使い切れなかった研究費を「預け金」として業者に管理させ、翌年度から自由に使う。こうした大学の不正な経理処理が再び問題になっている。
帯広畜産大が2002~07年度で総額4億5608万円が不適切だったとの最終報告をまとめたほか、東京工業大、慶応大、東京農大でも学内調査に入った。
事態を重視した文部科学省は、国公私立大学など全国約1300研究機関に対し、研究費の使途を精査して年末までに報告を求める大規模な調査に乗り出した。
使い切れなかった研究費は返還するのがルールだ。架空請求などの手口を使って業者に資金管理を委ねる預け金は、いわば裏金になる。
このことは何度も指摘されてきた。今なお、是正されていないなら大学側の認識は甘すぎる。各大学は徹底的に調査をし、うみを出し切り、不正根絶への対策を講じるべきだ。
帯広畜産大のケースは昨年9月、札幌国税局から指摘された。関与した教員は54人(転職、退職者も含む)に上る。教員数約130人の大学規模からも驚くべき多さだ。
確認された4億5千万円余りのうち、国などへ返還するのは研究費の出どころが判明した2億3千万円で、関わった教員から徴収する。これらの教員は来年度から4年間、研究費の申請ができない。
再発防止策としては、契約担当職員を6人に倍増し、教員が直接、備品発注することを禁止した。
一方、東京工業大などの預け金指摘は外部からあった。詳細は明らかではないが、首都圏のかなりの大学に波及する可能性もありそうだ。
東京工業大では、10月に次期学長に就くことが決まっていた大倉一郎副学長が調査対象となり、学長就任を辞退するに至っている。
研究費については次年度繰越制度の導入が必要との声もある。多くの教員は「プールして備品購入に充てる」と弁明しており、少ない研究費のやりくりの側面はあろう。
だが預け金にすると、一部が飲食代に充てられたり、投資信託に流用されたケースすらあったことを忘れてはならない。私的流用などのチェックができなくなる。
文科省は07年2月、研究費の管理・監査のガイドラインを作成し、事務職員によるチェックや懲戒規定の整備などを大学に求めてきた。
今回の調査では、預け金だけでなく、カラ出張などの請求や、プール金を研究室や個人で管理することも対象にしている。
研究費は税金である。大学関係者はその重みを自覚し、不正な経理操作とは縁を切ってもらいたい。