次世代燃料電池、九大が研究施設 産学で連携加速『日本経済新聞』2011年8月23日付

『日本経済新聞』2011年8月23日付

次世代燃料電池、九大が研究施設 産学で連携加速

 九州大学は福岡市に次世代燃料電池の産学連携研究施設を新設する。材料などを手掛ける企業が利用できる実験室や解析装置を備え、来年秋に完成させる。企業と共同研究に取り組み、家庭用電源や大規模発電設備などとして使う次世代燃料電池の早期の事業化と普及を目指す。福岡県内で進む産学官による水素エネルギーの研究開発がさらに加速しそうだ。

 研究施設は約17億円を投じて伊都キャンパス(福岡市西区)に建設する。

 燃料電池は水素と酸素を化学反応させて電気をつくるシステム。発電時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、発生する熱を給湯や暖房にも使える利点がある。「電解質」と呼ばれる主要材料にプラスチックを使う固体高分子形燃料電池(PEFC)は、すでに家庭用で実用化されている。

 九大の新施設で研究するのは次世代方式の固体酸化物形燃料電池(SOFC)。電解質にセラミックスを使うSOFCは発電効率がPEFCを上回るほか、大型化が可能で、火力発電の代替となる大規模発電設備として利用が期待されている。

 九州には電子部品や陶器など、セラミックス関連製品を生産する企業が多く立地する。九大がセラミックスを主要材料とするSOFCの研究施設を整備することで、地場企業の燃料電池事業の拡大や参入につながる可能性もある。

 研究施設は4階建てで、延べ床面積は約3400平方メートル。約70平方メートルの実験室を18室設け、電池内部の構造を解体せずに観察できる機器など最先端の解析装置を導入する。実験室は企業ごとに用意、機密の漏洩防止を徹底する。

 SOFCは高い性能が見込める半面、耐久性の確保や低コスト化などが課題となっている。九大は「水素エネルギー国際研究センター」などの組織を設置し、水素エネ分野で世界有数の研究体制を敷いている。研究施設を利用する企業の課題解決を強くサポートし、早期に製品を市場に投入できるようにする。

 九大は福岡県や新日本製鉄などと、産学官組織「福岡水素エネルギー戦略会議」に参加している。同会議の参加団体は水素を供給する水素ステーションを福岡市や北九州市に整備するなど、水素エネルギー利用社会の実現に向けた取り組みを進めている。

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