1300の大学・機関を調査へ 業者に研究費預け積み立て 大学教授ら不正経理 MSN産経ニュース配信記事2011年8月17日付

MSN産経ニュース配信記事2011年8月17日付

1300の大学・機関を調査へ 業者に研究費預け積み立て 大学教授ら不正経理

 多数の大学教授らが本来なら返還すべき研究費を取引業者に預ける不正経理をしていた疑いが浮上している問題で、文部科学省は8月中にも全国約1300の大学や研究機関などを対象に過去の不正経理の有無を緊急調査する。すでに20以上の大学や短大で不正経理に関する調査委員会が立ち上がっているが、指摘されている不正経理は数年以上前のもので、関係者からは「現在はそういう経理をやっている人はいない」と冷静な声も出ている。

 東京工業大が外部から指摘を受け、次期学長に内定していた大倉一郎副学長に不正経理の可能性があると明らかにしたのが7月29日。大学側は25日に調査委員会を設置しており、28日には大倉氏の学長辞退を発表していた。

 東工大によると、大倉氏は平成15~16年ごろ、外部の業者に商品を架空発注。余った国の科学研究費補助金(科研費)などを「預け金」として積み立て、その後に高額な理化学機器などを購入した疑いがある。

 科研費などの研究費の多くは単年度会計で、研究が年度をまたぐ場合に研究費を繰り越せない不都合が生じていた。このため、教授らが「預け金」を利用して後から必要な機器を購入する方法をとっていた。

 関係者によると、研究者によっては年間の研究費が億単位に及ぶため、百万円単位の試薬などを架空発注し、相当額を積み立てるという。業者も「預け金」を受けることで取引が継続できるメリットがあり、教授側へ利用を持ちかけるケースもあったとされる。

 東工大の発覚後、東京学芸、慶応、上智、立教、東京女子医科などの大学や他の短大でも教授らによる不正経理の疑いが浮上。いずれも私的流用ではなく、あくまで研究費の捻出が目的とみられるが、多くの大学の研究者に蔓(まん)延(えん)していた実態が明らかになった。

 ただ、文科省は19年、18年の早稲田大教授による研究費の私的流用発覚を受け、大学側が納品の検査機関を設けるなど不正を防止するためのガイドラインを作成。20年度から各大学で運用が開始されているほか、今年度からは科研費も一部基金化され、年度にとらわれず使えるようになっている。

 ある関係者は不正経理について、「背景に研究環境の不備があったのも事実」と指摘。別の関係者も「ガイドラインの前後で不正経理の意味合いは大きく違う。現在もあれば大問題だが、仕組み上も不可能のはず」と話す。

 文科省の鈴木寛副大臣は「ガイドラインやチェック態勢についても改めて検証したい」と述べており、今後はガイドライン運用後の不正の有無が焦点になりそうだ。

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