医療体制整備が成果/弘大被ばく調査『陸奥新報』2011年8月19日付

『陸奥新報』2011年8月19日付

医療体制整備が成果/弘大被ばく調査 

 東京電力福島第1原発事故に伴い、弘前大学が行ってきた教員、医師、看護師、事務職員らで構成する「被ばく状況調査(スクリーニング)チーム」の福島県内への派遣が、7月末で一区切りを迎えた。活動では目に見えない放射線に不安を覚える1万人を超える被災地住民へのスクリーニングに対応。弘大が進めてきた緊急被ばく医療に対応する専門家養成や設備整備などが未曽有の原子力災害で生かされた形となった。遠藤正彦学長は「安心・安全のための備えが有効に役立った点では良かった」と総括した。

 弘大は東日本大震災発生直後の3月13日に「弘前大学放射線安全機構」が、文部科学省からの「被ばく状況調査チーム」の派遣要請について受け入れを決定した。

 同15日に被ばく調査チームの第1次隊を派遣したのを皮切りに、7月末までに20隊(延べ派遣人員365人)が福島県内の各被災地で活動。住民ら5663人に対してスクリーニング(甲状腺スクリーニングを含む)を行った。

 また、警戒区域に指定された福島第1原発から半径20キロ圏内の住民の一時帰宅が5月に開始されたのに伴い、同25日からは「一時立ち入りプロジェクト」派遣チームを新たに派遣。11隊(延べ派遣人員202人)が同県南相馬市や川内村で、一時帰宅者5675人のスクリーニングに対応した。

 弘大が迅速かつ長期的に福島県内で活動できたのは、原子力関連施設が多く立地する本県の安心・安全のために、緊急被ばく医療の専門家養成や緊急被ばく医療に対するさまざまな体制整備や取り組みを進めてきた成果の一つだと言える。

 医学部附属病院に2010年7月に本格稼働した「高度救命救急センター」は緊急被ばく医療に対応。放射線測定器や分析機器など国内最高レベルの設備を有しており、同センターに所属する医師、看護師らはこれまでに緊急被ばく医療についての高度な訓練を受けている。

 また、医療従事者に対する被ばく医療教育も推進。08年度からは「緊急被ばく医療支援人材育成及び体制の整備」事業が文科省特別経費(プロジェクト)事業として認められた。

 これに伴い、大学院保健学研究科の多くの教員が千葉県にある放射線医学総合研究所での研修やアメリカ、フランスでの海外研修を通じて緊急被ばく医療についての専門的知識を習得していた。

 遠藤学長は「訓練を受けていたほとんどの教員が活動した。本務ではないにもかかわらず、心理的不安を持っている方のために進んで活動してくれた」と活動に携わった教職員らに感謝し、文科省から再度派遣要請があった場合は「弘前大学放射線安全機構での議を経て方針が決まる。要請があればまた考えたい」と述べた。

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