『福井新聞』2011年8月1日付
敦賀短大公立大学化、市会は難色 市、14年開学目指す
公立大学法人化を目指す福井県の敦賀短大について敦賀市は、市立看護専門学校と統合し、看護系の4年制大学として2014年度開学する方針を6月の市会特別委で明らかにした。市では「医療サービスの向上が図られる」と説明するが、市が負担する年間の運営経費が3億4400万円になることも示され、市会からは大学の必要性や在り方について疑問の声が上がっている。
(敦賀支社・渡辺一誠)
■医療サービス向上
同短大は1986年開学。学生数はピークの92年には541人が在籍していたものの、少子化の進展や高学歴志向が高まり減少。定員割れの状態が続いている。市は補助金として年間1億5千万円前後を毎年投入して存続を図っており、累計は10年度までで26億8千万円に上る。
同短大の存廃についてはたびたび市会でも議論の的となった。09年の3月市会では補助金の支出をめぐり、「説明責任を果たすこと」とする付帯決議を付けて認めた経緯もある。
市では、「嶺南唯一の高等教育の火を消すべきではない」と模索を続けた。今年6月の市会特別委で、14年度開学の看護学科を備えた4年制大学を目指す方針案を提示。高度な教育を受けた看護師を地元で養成することで、より高い医療サービスを市民に提供できると説明している。
■負担は増加
4年制大学を目指す理由として▽学生の高学歴志向▽看護系教員確保が短大では困難―を挙げた。特別委で穴吹憲男特任部長は「若者の流出防止や地域活性化にもつながる」と、まちづくりの観点からの必要性も挙げて理解を求めた。
しかし、市会の反応は厳しい。現在の短大の補助金と看護専門学校の運営費の合計より、4年制大学の運営費交付金は約5千万円増加。同特別委の原幸雄委員長は「負担に疑問を持つ市議は多い」と指摘。成功例として取り上げられる新見公立大(岡山県)の年間経費は約5億4千万円で、敦賀市の見込みが低すぎるとの見方もある。
高等教育機関の必要性を認める今大地晴美議員は「人材育成の観点から大学は必要。教育にはある程度の投資はやむを得ない」と理解を示す。一方「大学は敦賀の特色を生かしたものにしなければならない」と看護学科での存続には疑問を投げかけた。
■残り時間少なく
14年4月開学には、13年3月末に定款や学科、講師陣などを明記した大学設置許可を文科省に申請する必要がある。残された時間は1年7カ月余り。塚本勝典副市長は「教員確保を進める必要があり、時間はあまりない」と認めた。9月定例市会での関連予算計上を目指すが「まずは議会の理解を得ることが先決」と、慎重な姿勢を見せた。
東日本大震災で、原発関係の交付金が不透明になったことも市会の厳しい対応に結びついている。市は事業の財源的な裏付けを示す中期財政計画を8月下旬にも提示する方針。塚本副市長は「市の財政は他自治体に比べはるかに健全で、短大の大学化を進める余裕はある」と強調した。
原委員長は「現在の説明は『短大を存続するために4年制大学が必要』と強調しているだけ」と指摘。委員の市議からも「説明を聞いてもわれわれが『必要だ』とぐっと感じるものがない」と、市の?熱意不足?を指摘する声があった。
高等教育機関の存続なのか、医療サービスの向上なのか、大学の目的を明確にして、河瀬一治市長自らが議会に説明することも必要ではないか。