東大の秋入学 全国の大学、議論加速に期待 「独走」には懸念も『日本経済新聞』2011年7月1日付

『日本経済新聞』2011年7月1日付

東大の秋入学 全国の大学、議論加速に期待 「独走」には懸念も

 東京大学が入学時期の秋への移行について本格的な検討を始めた。国境を越えた大学間競争が加速する中、秋入学はかねて大学改革の課題に挙げられてきたが、東大が検討に踏み出したことで一気に広まる可能性が高まる。有力大学トップからは先導役としての東大に期待する声が上がる。グローバル人材の獲得が急務の産業界・官界も検討の行方を注視する。

 国際教養大学の中嶋嶺雄学長は秋入学の拡大が長年の持論。自らの大学でも積極的に取り組んできた。「遅きに失した感はあるが、東大はぜひとも実現してほしい。今のままでは日本の大学は、グローバル化の時代に立ち行かなくなる」とエールを送る。国際基督教大学の鈴木典比古学長は秋入学の意義を「国境を越えて学生が動きやすくなり、教育の質向上につながる」と説明する。

 長い間、秋入学は大学国際化の“切り札”といわれてきた。特に安倍晋三政権時代の教育再生会議は2007年、第2次報告に「9月入学の大幅促進」を盛り込み、文部科学省は翌08年、学校教育法施行規則を改定し、「4月から3月」としていた学年の始期と終期を学長判断で決められるよう規制を緩和した。

 だが、秋入学はなかなか普及しなかった。社会の意識や小中高校の仕組み、企業や官庁の採用時期、国家試験の実施時期など、社会の隅々まで春入学・春卒業が根付いていたからだった。

それだけに、東大が先頭を切って検討する意義は大きい。「どこかが勇気をもって始めなければならない。東大が踏み出せば、企業の採用や高校の対応も変わるかもしれない」。名古屋大学の浜口道成学長は議論の行方に注目する。東京工業大学伊賀健一学長も「東工大にも重要なテーマ。学内に検討機関が必要だと思う」と語る。

 地方大学の関心も高まる。広島女学院大学の長尾ひろみ学長は、「トップ大学が主導すれば地方の小規模大学も声を上げやすい」と話した。

 一方で東大の“独走”への不安も残る。伊賀学長は「秋入学にするなら全国一斉の統一ルールで行うべきだ」と述べ、長尾学長は「他大学とも足並みをそろえ、途中段階の議論も公開してほしい」とも指摘する。大学や社会に与える影響が大きいだけに丁寧な説明が東大には求められる。

表 海外有力大学の2010~11年の年間日程
大学名 授業期間 ()は学期 入試時期など
秋入学
イェール大(米) (1)9~12月 (2)1~4月 11月に出願→12月に合否発表
ブリティッシュ・コロンビア大(カナダ) (1)9~12月(2)1~4月 2月に入試。6~8月には夏季集中授業も
ケンブリッジ大(英) (1)10~12月(2)1~3月(3)4~6月 コースにより異なる
北京大(中) (1)9~1月(2)2~6月 3月出願→4月入試

春入学
ソウル国立大(韓) (1)3~6月(2)9~12月 6~8月に夏季、12~1月に冬季の集中授業

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