大学 苦心の節電策 『朝日新聞』福岡・北九州版2011年7月1日付

『朝日新聞』福岡・北九州版2011年7月1日付

大学 苦心の節電策

 「節電の夏」を迎えて、県内の大学が取り組みを始めている。基本姿勢は「講義や研究に支障のないように」「付属病院の患者さんに影響のないように」。室温管理のために温度計付きステッカーを貼ったり、休みを増やしたりして、気をつかい、知恵を絞る。

 福岡市の九州大は5月24日に全教職員へ節電を呼びかけた。夏季一斉休業日を1日設ける、冷房期間を7~9月にしぼる、などの対策も挙げた。

 九大の年間電気代は約15億円。その半分はOA機器と実験機器で占め、付属病院が31%、空調13%、照明5%と続く。病院はエアコンを制限すると患者の体調に影響しかねないため、全体での節電に心を砕く。

 室温管理の徹底のために6月下旬、温度が色でわかる10センチ四方のステッカーを1万枚作り、各部屋に貼った。28度未満は冷房を入れないルールがあり、「温度もわからないのに『守って』と言うわけにはいかないから」と施設管理課の責任者。

 これまでの省エネ対策を強めるのは、北九州市の九州工業大だ。5月から照明の制限、不要不急の電気製品の使用制限などを実施。さらに7月1日からは10%程度の節電を目標に、事務職員が毎日学内を巡回して室温28度が守られているかなどをチェックする。

 同大には戸畑、若松、飯塚の各キャンパスの電力使用量をオンラインで把握し、契約電力に近づくと自動的に教職員と学生の全員に警報メールを送るシステムがある。1日からはその基準を厳しくし、契約電力の90%を目安に警報メールが送られるようにする。

 研究実験については、夜にずらして行うとしても、日中から機器を一定温度に保たないと正しいデータがとれないケースがあり、節電は簡単ではないという。

 福岡市の福岡大も、8月のお盆の後に休業日を新たに2日設ける。研修や集中講義で休めない人は、別の日にとってもらう。

 一方で、衛藤卓也学長は「教育はモノの生産とは違い、サービスを提供し続けなければならない。病院も休むわけにはいきません」と、節電の難しさを打ち明ける。(宮崎健二)

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