『朝日新聞』福井版2011年6月23日付
看護師2人体制で効果 福井大病院、患者1人に1組
福井大学病院(福井県永平寺町)は入院患者1人に看護師2人がつく独自の制度に取り組み、さまざまな効果を上げている。導入から2年で医療ミスや超過勤務が減少し、患者の満足度も上がっている。
福井大学病院は従来、患者1人に看護師が1人ついていた。しかし、2009年4月から看護師が2人一組のペアを作り、互いの受け持ち患者も担当することになった。患者にとっては看護師が2人つく形だ。患者の健康状態をチェックするときなどは、1人の看護師が患者と話し、もう1人は記録係となる。なるべく若手とベテランがペアを組むようにした。
さらに、5ペア10人でチームを作る。パートナーが勤務の日はその人とペアを作り、パートナーが休みの日はチーム内の人と、それもできない場合は別のチームの人とペアを組むというルールを決めた。チーム内では患者の情報を共有するようにした。
■不満の声、一転
当初は看護師から不満が続出した。今まで受け持ち患者は5人程度だったが、ペアになった相手の患者を合わせると10人になり、負担感が増したのだ。ベテラン看護師からは「自分流の看護ができない」「時間がかかる」といった不満が、若手からは「先輩ごとにやり方が違う」「ペースがつかめない」などの声が出た。
しかし慣れてくると、効果が表れるようになった。
カルテ作りや点滴や内服薬も2人で確認でき、凡ミスが激減した。患者からの質問や頼み事にもすぐに対応できるようになった。受け持ちの患者の1人が急変しても、もう1人が他の患者に対応もできる。このため逆に効率が上がり、超過勤務の時間が導入前と比べて半分以下になった。
患者にも利点が大きかった。これまで若手の看護師が受け持つと不安を訴える人もいたが、ベテラン看護師もつくため、不満を訴える患者がほとんどいなくなったという。
■名古屋大へ波及
看護師11年目の木村いづみさん(32)は「後輩にその場で指導することもできるから、逆に効率的。後輩の仕事ぶりで初心に帰ることもある」と話す。
この制度は、今のところ消化器外科病棟だけで実施しているが、今後は全病棟で取り組む予定だという。また、名古屋大学病院も福井大学病院を視察し、この制度を取り入れていくことに決めたという。
■意思疎通も好転
パートナー制度を考案した上山香代子・看護師長は「これまで1人で抱え込んでいた仕事も、ペアで共有するようになった。看護師にとっても患者にとっても安心、安全な医療につながっている」。橘幸子看護部長は「結果として看護師同士のコミュニケーションも増え、病棟全体の雰囲気も劇的に良くなった」と話している。(山田理恵)