大震災で帰国の留学生、大学へ復帰続々…愛知『読売新聞』2011年6月16日付

『読売新聞』2011年6月16日付

大震災で帰国の留学生、大学へ復帰続々…愛知

 東日本大震災と福島第一原発事故の影響で一時は日本から帰国していた外国人留学生たちが、続々と大学に復帰している。

 日本での生活状況を親に伝えて説得してきた留学生が多く、文部科学省の調査でも復帰が裏付けられている。留学生は震災前の生活を取り戻しつつある。(山下昌一)

 文科省調査によると、東海3県や北陸などを含む中部地方(10県)の大学では、通学圏内にいる留学生は4月20日時点で94・1%(抽出調査)だったが、5月20日時点で97・3%にまで上がった。

 「日本から離れていた影響は、もうない」。名古屋産業大(愛知県尾張旭市)環境情報ビジネス学部2年の中国人留学生、許吉男さん(24)は笑顔をみせる。震災直後、両親が送ってきた航空券で実家の遼寧省に帰国したが、4月25日に日本に戻った。すでに新学期が始まっており、教員から講義した内容を聞き取るなどし、挽回した。日本のアニメに興味を持ち、3年間日本語を学んでから進学できた日本の大学。「もっと日本語がうまくなって、自分の会社をつくりたい」と意気込んでいる。

 多くの留学生が在籍する同大では、許さんのように新学期を遅れてスタートした学生のために、履修科目の登録時期を延長した。留学生の支援を担当する学生課の竇(とう)道徳さん(55)は、「中国は一人っ子政策なので、子供を大切にして中国への帰国を促した親の気持ちは理解できる。今後も精神的な面から学生を支えていきたい」と話す。

 一方、名古屋学院大(名古屋市熱田区)には7日、米オハイオ州立ボーリンググリーン大の留学生9人が予定通り到着した。来月上旬まで約1か月間滞在し、生け花や陶芸を体験するほか、京都や広島でも研修する。4年のエリック・ダトリッジさん(22)は「母は心配したが、日本に来るのは夢だった。被災地支援の活動にも加わりたい」と言う。引率してきた州立大の日本語教師、ジョーンズ川野朗子(あきこ)さんは「米国の学生は自立心が強いので、自分たちで情報を集めて親を説得してきた」と話す。

 名古屋大は、留学生1556人(5月20日現在)のうち、震災の影響で大学復帰または来日を見合わせているのは9人だけだ。一時は数十人が帰国していたが、同大留学生センターは「家族に顔を見せて、安心させてから戻ってきた留学生も多い」とみている。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com