履修単位の「質」追求 一橋大『朝日新聞』2011年6月14日付

『朝日新聞』2011年6月14日付

履修単位の「質」追求 一橋大 

 大学で各科目の履修者に与えられる「単位」が、「質」を問われる時代になってきた。各科目の成績に応じて軽重をつけ、取得した単位の質を数値化する「GPA」が一定値以上であることを卒業要件とする大学も出てきている。一橋大(国立市)も昨年度から採用した。及第点ぎりぎりでも必要な単位をそろえさえすれば大学を卒業できる、という時代は去りつつあるようだ。

 一橋大は2010年度入学生から、全4学部でGPAを卒業要件として適用する。入学だけでなく卒業にも高いハードルを学生に課すことになる。

 教育・学生担当理事の落合一泰副学長に聞いた。

 ――ねらいは。

 「教育の質の保証が大前提。教えっ放しでなく、アウトプットも重視しようということ。国際化が進み、GPAなしでは海外の大学と交換留学などをやっていくのが難しい事情もある」

 「従来は単位をそろえることが重要だったから、楽勝科目などの情報が飛び交い、教育上、大きな障害だった。そこで卒業にはGPA1.8が必要とした。将来は2.0にしたい」

 ――この1年の取り組みや成果は。

 「GPA導入にあたっては、低成績の学生への目配りが大事。そのための作業部会を設けた。GPAが低いまま4年生になると、回復は難しい。授業への出席率などを見て、GPAが低くなりそうな学生を早い段階で見つけるようにしている。1年目の夏学期の成績が出た昨年10月、GPAが低い学生対象の説明会もした。よい成績が取れそうにない科目の履修を撤回できる制度も認めた」

 「暫定的な結果だが、(本格導入した)昨年度の1年生に占めるGPAの低い学生の割合は、試行的にやった09年度より数%下がった。教員の学生に対する態度も変わったと思う」

 ――今後の課題は。

 「本学は伝統的にゼミを重視し、ゼミを基盤に卒業論文も書く。卒論をGPAの対象にすべきかどうかが今後の議論になるだろう。GPAを優秀者表彰に使って学生の励みにもしたい。もともと学部間の垣根が低く、他学部の授業を容易に取れることが一橋大の長所。GPA導入に際しても一層推し進めたい点だ」

 ――入るのも、出るのも難しい大学になります。

 「就職や資格取得などのため、今も一定割合の学生が留年している。GPA導入でさらに留年者が増えるのでは困る。ただ、きちんとしたケアは必要だが、数年前からの試行を見る限りGPAだけで卒業率が下がることはないようだ。学生を信頼しているし、本格導入した1期生が卒業する3年後がとても楽しみだ」(聞き手・大西史晃)

■GPA

 グレード・ポイント・アベレージの略。米国の大学では一般的な成績評価方法。各科目の成績に応じて点数(グレード・ポイント)を与え、平均値を卒業や退学の基準などに活用する。文部科学省の調査では08年度現在、国公私立の330大学(約46%)が学部段階で導入。33大学が卒業判定の基準にしているが、国立大では6大学にとどまる。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com