人事院総裁談話
平成2 3 年6 月3 日
人事院総裁江利川毅
国家公務員の給与減額支給措置についての法案が閣議決定されました。
国家公務員の給与については、国家公務員法第28条により、人事院は労働基本権制約の代償機関として、国会及び内閣に対して、給与が社会一般の情勢に適応するように報告・勧告を行い、それを踏まえて最終的に国会が決定する仕組みとなっています。
今回の給与減額支給措置は、我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み、現行制度の下で「極めて異例の措置」として行うものとされていますが、労働基本権が制約された状況下において国家公務員法第28条の定める手続によることなく、給与の減額支給措置を行おうとするものであります。また、法案の閣議決定に至る過程では、政府と職員団体との間で交渉が行われましたが、一部の職員団体との間で合意に至ったものの、反対を表明している職員団体があるほか、職員団体に属していない職員も多数おります。したがって、このような給与減額支給措置については、遺憾と言わざるを得ません。
なお、今回の給与減額支給措置は平成25年度末までの約3年間の措置とされていますが、国家公務員法第28条においては、人事院は、少なくとも年1回、国家公務員の給与について検証し、必要な報告・勧告を行うことが求められており、今回の給与減額支給措置が行われる間、労働基本権制約の代償措置が本来の機能を果たさないことにならないかとの懸念があります。
今後、国会において、これらの点も含め、慎重な御審議が行われることを期待いたします。
人事院は、本年の民間給与実態調査を東日本大震災の影響を受けて例年よりも遅れて実施することとしましたが、今後、鋭意作業を行い、国会と内閣に必要な報告・勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしてまいります。