給与削減問題で単組代表交渉 震災復興に向けた体制整備こそ政府の責任 国公労連速報 2011年5月25日《No.2550》

国公労連速報 2011年5月25日《No.2550》

給与削減問題で単組代表交渉 震災復興に向けた体制整備こそ政府の責任

 国公労連は25日、単組委員長を含む政府・総務省交渉を実施。震災復興に向けて厳しい条件のもとで懸命に努力を重ねる現場の実情を訴え、政府による1割カットの提案の不当性を厳しく追及しました。交渉には、川村副委員長を責任者に総勢20名が参加。総務省側は村木人事・恩給局が対応しました。

 冒頭、川村副委員長は、「今回の給与削減問題で5月13日から3度にわたり交渉を重ねてきたが、いずれも納得できる回答はなく、賃下げに大義も道理もないことが明確となった。政府の賃下げ提案が現場にどう受け止められているか、よく聞いてほしい」と発言。それを受けて各参加者は以下のように主張しました。

○今回の賃下げ提案に職場は大いに怒っている。政府はこれまで人勧尊重と言ってきたのに、今回は人勧を無視して一方的に賃下げを提案した。これは重大な権利侵害だ。削減の生活への影響は甚大であり、突然言われても子供が学齢期にある世帯などは死活問題だ。自律的労使関係制度の先取りというが、交渉不調の場合の調整の仕組みもないままでは対等な話し合いはできない。

○陸海空、研究の職場をかかえている。人員が削減され採用抑制も強行され、人が足りない中でも、震災発生直後から現場に駆けつけ空港や港の復旧に努力したからこそ、全体の復旧も進んだし、物資輸送もできるようになった。そうした職員の努力への報いが賃金削減なのか。今回の提案は人道にもとるものだ。

○大震災以後、被災地も含めて全国の職員は全体の奉仕者としてそれぞれの職場で懸命に努力している。そのような中での大幅な賃金削減の話しは納得できない。これからどうなるかという不安もある。仕事のモチベーションにも大きく影響する。

○大震災以後、現場と本庁一体で地震情報を含めた情報提供に奮闘してきた。家族を失い、家を流された職員もいる中、身を削られるような努力が求められている。そうした努力への報いが賃下げなのか。1割削減は懲戒処分と同じだ。正確・迅速な地震防災に加え、一般情報も出さねばならない。政府として今やるべきは必要な労働条件確保だ。

○今回の震災では全国から応援のために被災地の事務所に派遣された。断水、停電している事務所で段ボールの上に寝ながら、物資輸送のため道の普及にむけ日夜奮闘している。こうした職員の活躍は自衛隊にも匹敵する。それに対し、政府は勧告に基づかない賃金削減を強行しようとしている。「復興のため」は理由にならない。景気への影響も考えると、賃下げではなく防災体制の充実こそが求められる。

○政府がやるべきことは賃下げより公務を支えることだ。震災時の自衛隊や海上保安庁の出動は当然だが、今回、港湾関係は非常勤職員が混乗する船も原発のそばまで出動した。港近くの事務所がすべて壊滅状態にある中で、職員は大変な苦労をして仕事を続けている。その中での賃下げ提案は職員の士気にも仕事にも影響する。賃下げは全くの愚策であり、それが他にも波及することを考えれば復興などあり得ない。

○今回の提案は削減率が大きく、確実にローンを返せない人も出る。管理職も生活の不安を危惧している。今回の提案は愚策といわざるをえず、すでに東北などではこれを契機に賃下げや人員整理を一気にやろうという動きがあるとも伝えられている。復興財源のためというより民主党のマニフェストが出発点だという。それなら、復興財源のためならやむなしと考えている人たちも到底認められないという。一部組合との妥結を理由に決定を押しつけることも不可能だ。

○もともと医療崩壊・医療過疎地域といわれた東北沿岸の医療機関が今回の津波によってほとんど失われた。そのような中で、おむつをしてまで働き続けた看護師がいたし、医師も不眠不休で働いた。国の政策でいわれなき差別を受けてきたためにハンセン病療養所はもともと欠員が多く、サービス低下に悩んでいる。8%の賃金カットではさらに人も集まらず、どうやってサービスを確保せよというのか。被災地の医療を守るためにも、そうした愚策はやめるべきだ。

○ハローワークは夜間も土日も窓口を開いているが、雇用保険、労災保険の給付や申請が激増している。国民感情があるというが、保育士などは補助金の大半が公務員賃金準拠であり、タクシー業界は客が減ると心配している。公務員も労働者であり、労働条件の一方的不利益変更は認められない。しかも労働基本権制約の代償措置を無視するやり方は憲法違反だ。労使関係制度の先取りといいながら、紛争の調整手続きもないまま、一方的に3年間カットはおかしい。一部組合との合意があれば許されるというなら乱暴なやり方だ。

○震災による通信途絶という状況に対し、家族を失った職員も含め現地で回線・無線の復旧・復興を優先に、サービス残業もいとわず取り組んできた。今回の提案10%削減は懲戒処分にも匹敵する。職員の間では何か悪いことをしたのかと、怒りの声が高まっている。その一方生活への影響から不安も広がっている。指定職などとちがって35歳で月30万円という状況で3万円をどうやって削れというのか。一方の組合との合意を理由に決定を強行することは認められない。

○大震災にかかわる特例法があることを知らせるために、職員は土日、深夜含めて説明に回っている。また政府は財政再建にむけどのような努力をしたのか。我々は不公平税制の是正や特例的財源で20兆円、法人税引き下げの見直しで3000~5000億円、租税特別措置の透明化で16兆円の増収となると提言。復興財源が何10兆円かという分からないまま、財政再建の努力もなしに賃下げだけを提案するのはおかしい。直ちに撤回すべきだ。

○復興にかける全国の職員の懸命の努力と思いを使用者としてどう受け止めているのか。人勧によらない決定手続きは認められない。政府として今なすべきことは、住民の声に基づく復興対策とそのための予算の確保であり、賃下げの提案ではないはずだ。

○政府の今回の手続きは国公法28条の情勢適応原則からみて違法だ。国会は社会一般の情勢に適応するように勤務条件を随時変更できるが、そのためには人事院勧告が不可欠となる。人事院総裁も国会で同趣旨の発言をしている。昭和57年の人勧凍結も手続き上は28条を踏まえている。勧告が出る前に政府が引き下げを決定することはできない。また、指定職は年収1800万円、局長1400万円程度となるが、係長は年収300万円前後でゆとりは全くない。そこからさらに5%も減額するのは人の道としてどうなのか。我々は削減自体に反対だが、提案内容にも問題が多いと言わざるを得ない。

○今回の提案に被災地の公務員は大きな怒りを感じている。被災地では大震災の瞬間から大変な状況が続いている。家にも帰れず、そのまま官署が避難所になり、家族の安否確認も後回しにして仕事をせざるをえなかった。自宅や実家が流された職員、家が水につかり、2階で生活しながら出勤している職員、被災地に出勤する職員、それぞれ精神的に疲れており、今後の生活に不安を抱いている。今後さらに復興で仕事が忙しくなることが目に見えている中で、賃金削減とはどういうことか。政府がやるべきことは、公務員が本当にがんばれるための予算の確保ではないか。自衛隊だけがクローズアップされているが、すぐその横で働いている我々にも目を向けるべきだ。

 これを受けて、総務省側は以下のように回答しました。

●基本的に厳しい財政状況の下、震災以前から歳出削減は避けられない状況であった。震災でさらに大きい財政需要と支出が予想され、歳出削減と人件費もまったなしとなった。財政再建では、昨年から事業仕分け等で見直し努力を続けてきたし、一次補正では民主党の重要政策(子供手当、高速道路無料化等)の見直しも行った。

●削減率が厳しいことは承知しているが、その上であえてお願いしている。10%、8%、5%は地方公務員の独自削減の例を参考に、何とかこのくらいと提示したもの。

●震災後、皆さんが各地で復興の仕事に取りくみ、通常より業務が増えているのは分かる。公務員給与が高いとかムダであるという観点からの提案ではない。財政の危機的状況から、人件費削減に努力しなければならないためで、大臣も言うように心苦しいが、この措置が復興の手助けにもなるとの観点で理解していいただきたい。現場のご苦労は重々理解した上でだが、給与は下がっても仕事はがんばるようお願いしたい。

●今回のやり方は確かに異例で、通常の状態では想定されない事態に対応するための措置である。しかし、それが違法とは認識していない。人勧に基づかない措置という指摘はその通りだが、異例の財政事情(それは今後もより厳しくなる)、3年間の時限措置であること(それが終われば今の給与法の水準に戻る)、基本権回復のための制度創設にも努力することを同時に提案している。最終的には国会の判断によるが、政府としては審議がスムースにいくようお願いするにつきる。

●経済政策として愚策だというが、基本的にマイナスの影響は否定できないが、削減分も復興財源になり復興に向けた公共支出の増はある。全体として経済に悪影響を与えるとは考えていない。

 この回答に対して組合側は「歳出が増えるといってもその金の回り方が問題。仮設住宅建設でも大手のハウスメーカーが受注し、地元の大工さんが低賃金で使われるだけでは地元は潤わない。作業船が50キロ沖で遺体を発見することもある。政府としてもっと現場の苦労を把握すべきだ」「自衛隊が活動できるのは、航空の官署とそれを動かすための現場の努力があるからだ。応援態勢でますます人が足りない中、1分1秒単位で仕事をする職員を減らして飛行機が飛ばせると考えているのか」「削減は国家公務員にとどまらず、地方公務員や独立行政法人にも必ず影響する」「国が首を切ったり賃下げをしながら、その影響が民間には及ばないというのか」「賃金は下げるが仕事はがんばれというのはたちの悪い事業者と変わらない。民間でも労働条件の不利益変更は違法であり、政府もそれを踏まえるべきだ」「23年度の勧告が出ていないもとで一方的に給与を削減する。そのどこが違法でないのか明確にすべきだ」「自律的労使関係の先取りというが、今回の交渉が不調に終わるときは、我々の権利はどう保障されるのか」などと厳しく政府側の姿勢を追求。

 総務省側は「個々の局面はともかく、経済のマクロの面では大きな公共支出がプラスに働くということを言いたかった」「削減で何らかの影響は否定しないが、民間賃金の最終判断は労使交渉によるので、政府としてはそれをコントロールできない」「昨年の勧告の処理の段階で、すでに引き下げを検討することにしていた。その意味で、昨年の勧告の延長線上での検討だ。なお、国公法には勧告がないと改定できないとは書いていない。また、人事院は大きな変動があれば年に2回も勧告できるし、大きな変動がなければ勧告しなくてもよい」「(自律的労使関係制度の)先取りとは話し合いで決めたいということだが、確かに交渉不調の場合の調整措置はない。それも含めて異例の話し合いで決めていきたいということであり、不調の場合どうするかについて、私としては答えられない」「出口を決めての話し合いをやっているつもりはない」などと、まったく詭弁を弄した回答に終始しました。

 国公労連の川村副委員長は「我々の主張を受け止めた回答になっていない。労働基本権が制約されている下での交渉という認識も感じられない。①一方の組合と合意したことを理由に国公労連が納得できないまま強行するつもりか。また団結権のない職員にはどう説明するのか、②今回の交渉では、交渉不調の場合の救済の手段もないことをどう考えるのか、③ローン支払いなどの職員の生活問題、係員クラスへの影響の甚大さなどについてどう考えるのか――以上の3点を宿題とし、次回の交渉までにしっかり回答できるよう検討を求める」と強く主張しました。

以上

 

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