北里大学三陸キャンパス 「5年間は使用せず」 『東海新報』2011年4月19日付

『東海新報』2011年4月19日付

北里大学三陸キャンパス 「5年間は使用せず」 

 北里大学を運営する学校法人北里研究所の柴忠義理事長は18日に大船渡市役所を訪れ、海洋生命科学部が利用していた三陸町越喜来の三陸キャンパスを5年間使用しない計画を伝えた。これまで4年間としていたが、24年度入学生も同期間使用しない方針を決めたため、1年延びた形となった。市では早期再開への要望を続ける一方、県では被災者に学生向けアパートの活用を検討しており、経済的な影響を最小限に抑える対策も進める。

 市役所では、戸田公明市長と新沼辰男企画政策部長、県沿岸広域振興局の水野尚光副局長が対応。冒頭を除き会談は報道陣には非公開で行われ、終了後に柴理事長と戸田市長が取材に応じた。

 三陸キャンパスではなく、相模原キャンパス(神奈川県)を使用する理由について、柴理事長は「学生に対して責任を持って教育するために、環境をどう整えるかが重要。東日本大震災による被災状況などを、トータルに考えた」と説明。

 北里大学側では当初、時期は本年度入学生が在籍する4年間としていた。しかし、来年度入学生向けの募集要綱を定めなければならない時期を迎え、15日に開かれた理事会で24年度入学生も4年間相模原キャンパスを利用する方針を決めた。

 本年度の入学予定者の中には「三陸で勉強したかった」と、辞退したケースもあった。柴理事長は、今後について「学生側の意向や、1年ごとの大船渡の復興状況を判断しながら検討したい。三陸には来年で築40年を迎える校舎が4棟あり、建て替えるか修繕するか対応策を固める」と説明。築年数が短い実習棟もあるため、一時的な実習で利用する可能性はあるという。

 移転期間の短縮は「なかなか難しい。学生にはすでに約束している」と否定。さらに「戻っても学生が志願してくれるか。とくに父母の意向をリサーチしないといけない。私学であり、経営面も大切」とし、25年度以降の新入生への対応も慎重な姿勢を示した。

 この日の会談で柴理事長は、市内3カ所に計30戸ある職員住宅をリフォームし、3年間無償で提供する意向も伝えた。6月下旬から利用できる見込み。

 戸田市長をはじめ、地元市議や商工会議所、アパート経営関係者らは北里大学に対し、三陸キャンパスでの早期授業再開を要望している。長期間の移転は、家賃収入といった経済分野、まちの活気、産学官連携など影響は多岐にわたる。

 戸田市長は「早期再開を望むが、まずは復興した大船渡を見てもらうことが重要」と語り、長期的な視点で北里大学側に理解を求める姿勢を見せる。市内には学生向けに約550戸のアパートがあり、このうち約150戸で津波被害を受けた。現状では約400戸が空室となる可能性がある。

 一方、県では被災者支援として民間アパート活用の検討を始めた。水野副局長は「これから復興支援などとして、関係者が多数入ることが見込まれる今、大船渡は住む場所が足りない状況」と語る。市でもこうした動きと連動しながら対応を進め、アパート経営者への影響を最小限に抑える方針。

 キャンパスがある越喜来崎浜地区では、長期間にわたって学生がいなくなることへの不安や落胆も大きい。地域住民で構成する崎浜公益会の遠藤喜隆会長は「津波被害で漁業もできず、アパートにも入居者がいなければ経済的にも打撃が大きい。交流がある卒業生と連絡をとり、早期再開への動きを働きかけるなど、対応を考えたい」と話している。

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