被災の研究者ら、京の大学へ 京大、30人超受け入れ『京都新聞』2011年4月22日付

『京都新聞』2011年4月22日付

被災の研究者ら、京の大学へ 京大、30人超受け入れ

 京都の大学や研究施設が、東日本大震災の影響を受けた東北、関東地域の大学の研究者や大学院生らの受け入れを進めている。「ヒト幹細胞」など最先端の研究に取り組んでいるグループもあり、京都の大学が世界レベルの研究の継続をサポートしている。

 京都大は地震発生直後から、部局ごとに受け入れを始めた。全体の人数は不明だが、理学研究科だけで東北大を中心に東京大など地震の影響を受けた大学からこれまで30人以上を受け入れている。

 再生医療で注目されている多能性幹細胞「ミューズ細胞」を発見した東北大(仙台市)の研究グループの北田容章准教授(39)は、ほかのメンバーとともに先月17日から京都大吉田キャンパス(京都市左京区)で、細胞の遺伝子や機能を調べる実験を続けている。

 地震で研究室の機材類が壊れたほか、電気や水道が止まり、実験を続けられない環境となった。以前から京大と共同研究を行い、共通の機材があるなど条件が整っていたため、一時拠点を移した。メンバーは京大の宿舎などに滞在している。

 実験は長時間行われるケースが多く、京大は建物のIDカードの発行などの便宜も図った。北田准教授は「バイオ細胞は二酸化炭素濃度など一定の条件を保たないと2時間ほどでだめになってしまう。日ごろから連絡を取り合っていたため、スムーズに実験を再開できたのは大きい」と話す。

 京大ではこのほか、生態学研究センター(大津市)が独自に旅費や滞在費を支援する緊急支援共同研究を募集している。京都産業大(北区)は、上智大(東京都)の中国人留学生5人を約半年間受け入れ、総合地球環境学研究所(同)も研究者らの受け入れ態勢を整えている。

 北田准教授らはまもなく東北大で実験を再開する予定だが、余震による停電など不安も残るという。北田准教授は「研究設備を守るためにも今後は免震構造の建物が欠かせなくなる」と話している。

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