大学110校超が始業日延期 交通事情・計画停電を考慮『朝日新聞』2011年4月4日付

『朝日新聞』2011年4月4日付

大学110校超が始業日延期 交通事情・計画停電を考慮

 東日本大震災の影響を受けて、国公立大24校と、東北・関東・甲信越地域の私立大約90校が、授業の開始時期を遅らせる。施設に大きな被害が出た東北の大学はほとんどだが、関東の大学も2割程度が遅らせる。交通事情や計画停電を考慮したためという。

 文部科学省が全国の国公立大と東北・関東・甲信越地域の私立大を対象に調べた。4月1日現在、授業開始を遅らせて4月中に実施するのは、国立5、公立8、私立52校。5月中が国立5、公立6、私立41校。検討中が国立1、公立1、私立3校だ。

 早稲田大は、全学的に前期の授業開始日を4月6日から5月6日に、終了日を8月2日から同4日に変更した。公表したのは地震発生1週間後の3月18日。

 広報課によると、所沢キャンパスなど計画停電に一部影響を受ける恐れがあったことや、余震や交通機関の混乱も考えた。被災地の新入生らの入学手続きが遅れることも念頭に置いて、1カ月延期したという。

 慶応大も、医学部を除く大半の学部で、当初予定していた4月6日から、10日~1カ月程度遅らせることにしている。早稲田大と同様に、交通事情や電力消費の抑制などが理由だ。明治大なども5月以降の開始日となっている。

 学部で対応が分かれたのは東京大。総長の指示で各学部に判断が委ねられた。工学部が5月6日、経済学部が5月10日に遅らせたが、ほかの学部は予定通り4月4日ごろから始める。

 一方、東洋大は3月下旬、予定通り授業を始めると発表した。竹村牧男学長はホームページで「勉学可能な者が日々を安易に過ごさず、大学での学習に真剣に取り組むことが、被災下において必死に生きていこうとしている人々にエールを送ることになると思う」とメッセージを述べた。

 広報課によると、日程には賛否両論あったが、スケジュールをずらして夏季に集中講義をしても冷房で電力消費が増えかねないことや、授業時間の確保を考えたという。震災による影響が出た場合はその都度、個別に対応する。

 中央大や千葉大なども原則予定通りの日程だ。

 各大学とも神経をとがらせたのは、停電の影響とともに、授業時間の確保だ。

 大学設置基準では、年間の授業時間数が規定され、1単位をとるには45時間が必要だ。通常は前期に15週の授業を確保するよう求められている。この通りに運用して授業開始時期を遅らせると、授業が夏休みにずれ込むことや就職活動に影響が出る恐れがある。

 このため、文科省は3月25日付で各大学に事務連絡を出した。前期は15週だが、大震災の影響で開始時期を遅らせる場合は、リポートやウェブによる授業などの工夫で弾力的に対応できる趣旨を通知した。(教育担当=山上浩二郎)

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