この人に聞く:山形大学長・結城章夫さん『毎日新聞』山形版2011年2月27日付

『毎日新聞』山形版2011年2月27日付

この人に聞く:山形大学長・結城章夫さん

◇有機ELで世界一に 生まれ故郷に貢献--結城章夫さん(62)

 就任4年目を迎えた山形大の結城章夫学長(62)。この3年間、大学の改革に取り組み、取得研究費が増えるなど成果を出した。重点分野の有機エレクトロニクスでは、米沢市に「先端有機エレクトロニクス研究センター」を今春開設し、研究を本格化させる。結城学長に話を聞いた。【和田明美】

 --大学は得意分野を持つことが重要だと主張していますね。

 地方の国立大学として、ここでしかやってないという分野をいくつか持ってないといけない。工学部の有機EL、医学部の分子疫学、理学部の核子スピンの3分野を、日本一の研究拠点に位置づけ重点支援している。

 --有機EL研究は、国際標準化や量産化に向け山場です。

 城戸淳二教授らノーベル賞クラスの卓越教授によるドリームチーム作りを進めている。科学技術振興機構から年2・2億円、科学技術振興調整費からも年1・5億円をそれぞれ5年間もらうことが決まった。4人の助教を新たに呼び、最初の3年は年600万円、その後は年300万円の研究費と、博士号を持つ研究員を付けて5年間研究してもらう。良い仕事をすれば正規に准教授に採用する。

 有機EL以外でも6人の助教を引っ張ってきたが、全10人のうち8人は国が研究費の面倒をみてくれる。他の国立大では、こういった競争的資金を取得しているが、山大は今回が初めて。

 --有機EL照明の国際標準化とは?

 照明の色や明るさなどの世界標準を定めること。世界一の業績のところの基準がそのまま世界標準になることが多いので、2番ではだめ。有機ELのヨーロッパの拠点になっているドイツのドレスデンも国策で国際標準化を狙っている。ドレスデンとの競争です。

 --国際標準になったら、どうなりますか?

 日本の有機EL商品が世界に売れやすくなる。日本で作ったものを、そのまま世界に出せるわけですから。

 --村山市の出身ですね。文部科学事務次官から山形大に来たのは希望でしたか?

 仙道富士郎前学長からお誘いを受け、随分考えましたが、山形大を通し生まれ故郷に貢献するのも、ぜひやりたいことだと思い戻って来た。山形でなかったら断っていたと思います。3年たち、やりがいはあるし、良かったと思ってます。

 --無駄な会議が減り、意思決定が早くなったと聞きます。

 今までの学長は、学内から上がるのが普通だったので、思い切った改革は難しかったのでは。私は外からぽんと来て、しがらみがない。慣習や伝統は尊重しますが、あまりそれに縛られない。極めて異例ですよね、中央官庁から来るのは。思い切って突破してもらいたいという負託だろうと思い、大学の改革に取り組んでいます。

 70ぐらいあった委員会を集約して十数個にした。それから事務の簡素化のため、一つの決裁書に10~20個ぐらいの判子を押していたのを3個ぐらいに減らした。そうすると、意思決定が早くなり、教授が会議に引っ張られる時間が減り、事務方の仕事もコンパクトになった。余った時間を学生の学業や就職支援などに振り向けるようにしてもらった。

 --民間などからの外部支援金が増えたそうですね。

 「国からの支援を座して待つだけでは、じり貧になる」と言い続けている。外部資金は、06年度11億2100万円だったが毎年増えて09年度は21億4900万円。民間からの受託・共同研究費は06年度5億4600万円だが、10年度は8億4400万円まで増えた。私は何も圧力はかけていません。たくさん取れたのは先生らの実力で、研究を積極的にアピールした成果だと思います。民間は実力ある、質の良い研究にしか資金を出しませんから。

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 ■人物略歴

 ◇ゆうき・あきお

 村山市生まれ。山形東高、東大工学部卒。71年科学技術庁入庁。米ミシガン大大学院で工学修士。文部科学審議官などを経て、05年文部科学事務次官。07年9月から山形大学長。

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