阪大が米核兵器研究所で共同研究へ 超新星爆発を再現『朝日新聞』2011年2月13日付 

『朝日新聞』2011年2月13日付

阪大が米核兵器研究所で共同研究へ 超新星爆発を再現 

核兵器の維持管理を主目的に設立された米国の研究施設で、大阪大が来年にも共同研究を始める。世界一とされる強力なレーザーを使い、恒星が燃え尽きた最期に起きる「超新星爆発」を地上で再現し、しくみの解明に役立てる。

 恒星の内部では、水素やヘリウムなどの軽い元素が融合して重い元素がつくられる「核融合」が起きている。星の最期には、重い元素が重力で収縮して超新星爆発が起きる。阪大の研究は、爆発の際に衝撃波や宇宙線が発生するしくみを、レーザーによって再現して確かめる。

 エネルギー省の核兵器研究所「ローレンス・リバモア国立研究所」にある「国立点火施設」(NIF)が昨年、基礎物理の共同実験を国際公募。阪大の1件を含む12件が採択された。

 NIFはラグビー場ほどの大きさの実験施設に192本のレーザーを備え、光を一点に集中させて水素などに照射して核融合を起こし(点火)、水爆と同じ状態を人為的に作り出すのが主目的で、約4千億円をかけて2009年に完成した。

 主に経年劣化した核兵器の爆発性能を確かめる実験に使われ、1年半以内の「点火」実現を目指す。点火の必要のない基礎物理研究も行われる。NIFがつくる超高温、超高圧の状態は輝く星に近い環境とされる。

 交渉に当たった阪大レーザーエネルギー学研究センターの疇地(あぜち)宏センター長は、「研究内容は軍事と無関係の基礎科学なので問題ないと判断した」と話す。採択したのはNIFの外部の人でつくる委員会で、透明性は高いという。

 NIF側は今回、基礎研究だけでなく、点火を目的とした共同研究も日本に申し入れた。阪大側は前向きに検討したが、実験の所管がエネルギー省内の国家核安全保障局という軍事部門だったため、軍事研究に加担したととられかねず、断念したという。

 NIFが国際公募したのは、軍事研究費削減の圧力が強まる中、他国を取り込んで予算を確保しやすくする狙いがあるものと見られる。阪大も、40年前からレーザー核融合の研究を続けてきたが、研究費はかつての1割ほどになっている。(小宮山亮磨)

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