専門枠越え発達障害研究、広島大大学院プロジェクト『読売新聞』2011年2月16日付

『読売新聞』2011年2月16日付

専門枠越え発達障害研究、広島大大学院プロジェクト

科学的裏付けで自立支援も

 広島大大学院は4月から、脳科学や行動科学、工学など異なる分野の研究者がチームを組み、発達障害を研究するプロジェクトを始める。

 遺伝子レベルまでさかのぼって原因を究明する一方、機能改善に向けて多角的にアプローチすることで、より効果的な診断、支援体制を整えたい考えだ。(島田喜行)

 発達障害は、自閉症やアスペルガー症候群などの「広汎性発達障害」、衝動的な行動などを取る「注意欠陥・多動性障害」、読み書きなど特定の学習が困難な「学習障害」の総称。脳の機能障害が原因とされている。

 広島大大学院では2009年、医歯薬学総合研究科の内匠(たくみ)透教授(脳科学)が遺伝子組み替えにより、人間の自閉症に似た症状のマウスを作ることに成功。発達期に脳内で特定の神経伝達物質が減少していることを解明し、自閉症の治療や新薬の開発につながる可能性があることから、プロジェクトチームで研究を進めることになった。

 チームは、総合科学、教育学、工学、保健学、医歯薬学総合の5研究科と付属病院の計約30人で構成。マウスを使った研究に加え、発達障害を持つ人と家族の協力を得て、原因遺伝子を探り、病院で成果を踏まえた診断や治療を目指す。

 また、脳と行動の関係を明らかにし、研究結果と心理学を組み合わせて自立支援策を作り、機能改善につながる建物のデザインなどを考えるとしている。

 内匠教授は「今までは障害に合わせた対症療法が主体だった。プロジェクトでは発症原因を突き止め、科学的根拠に基づいた支援体制を確立したい」と意気込んでいる。

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