教職大学院設置計画履行状況等調査の結果等について(平成22年度)平成23年2月4日

教職大学院設置計画履行状況等調査の結果等について(平成22年度)

 平成23年2月4日

1.調査の目的等

 設置計画履行状況調査(以下,「アフターケア」という。)は,各教職大学院の教育水準の維持・向上及びその主体的な改善・充実に資することを目的として,文部科学省令(※1参照)及び告示(※2参照)に基づき,文部科学省が,設置認可後,当該認可時における留意事項(設置基準の要件は満たしているが,一層の改善・充実が必要と認められた事項),学生の入学状況,教育課程の編成・運営状況,教員組織の整備状況その他の設置計画の履行状況について,各教職大学院から報告を求め,書面,面接又は実地により調査するものである。

2.実施体制及び実施方法

 大学設置・学校法人審議会大学設置分科会では,アフターケアについて,運営委員会の下に「設置計画履行状況等調査委員会」を設置し,所要の調査審議を行っているが,教職大学院については,新たな教員養成の中核を担うものであるという制度の特質を踏まえ,特に専門的な調査審議を行う必要があることから,「教職大学院特別審査会」(別紙1)に付託し,調査に当たっている。

教職大学院特別審査会では,本年度は,完成年度を迎えていないすべての教職大学院(昨年度開設5,今年度開設1)と完成年度を迎えた教職大学院のうち,昨年度のアフターケアで留意事項が付された教職大学院(17件)(別紙2)を対象として書面調査を実施した。

書面調査は,大学から提出された「設置計画履行状況報告書」及びこれを裏付ける詳細な「補足説明資料」に基づき実施し,書面調査の結果,大学からの追加の説明聴取が必要であると判断した教職大学院(13件)を対象として,実地調査を実施した。実地調査は,大学からの説明聴取,学生インタビュー,教育委員会インタビュー及び施設設備調査を実施した。

3.総合所見
教職大学院が開設されて3年目となる平成22年度は,高度な実践力・応用力を育成する専門職大学院として,さらに意欲的かつ多様な取組が設置の趣旨・計画に沿って行われ, 教職大学院の設置を契機に教育委員会との連携や,教職課程全体の活性化などの面で,着実に実績を積み重ねており,昨年度のアフターケアにおいて付された留意事項にもおおむね適切に対応する努力がなされ ており,その結果,修了生や教育委員会の評価,教員就職率において,確かな成果を生み出している。課題であった入学定員の充足率についても,一部を除いて着実に改善されつつある。

 また,本年6月の大学設置・学校法人審議会大学設置分科会において,留意事項を付すに当たっては,「中長期的な大学教育の在り方に関する第二次報告」(平成21年8月中央教育審議会大学分科会)において,「設置認可時や設置認可後の設置計画履行状況等調査における指摘事項を認証評価で活用するなど,設置認可と認証評価との連続性を確保」することが,今後の検討課題として挙げられていることを踏まえ,アフターケアにおける「留意事項等の付し方」について,1.留意事項を付す際には,記述可能な範囲で,より具体的な背景等の記述を行うこと,2.留意事項を付す際の主な観点を共有し,留意事項の内容や水準に大きなばらつきがないようにするとともに,要望事項についてはその他意見として大学に別途伝達し,大学の自主的な改善を促すこととした。

 そのため,教職大学院特別審査会においても,上記に示された方針に基づき留意事項とすべき事項とその他意見とすべき事項の基準を整理し,要望事項や大学の取組を促す事項についてはその他意見とし,設置の趣旨や設置計画に記載のあった事項について適切に履行されていない場合を留意事項とすることとした。

 今年度の調査結果については,開設から3年目を迎え,多くの各教職大学院の取組の改善・充実が図られていることを踏まえ,上記の整理に従い個別の大学の状況を調査した結果,留意事項を付したのは4件となっている(別紙3)。

 教職大学院は,教育委員会や学校等と連携しながら,教員養成課程全体の改革を図り,学部と大学院を通した教員養成のモデルとして成果をあげることが広く求められている。 また,教職大学院では,教育委員会・学校等と連携しながら,理論と実践が融合した新しい教育方法や体制に関する先進的な取組を着実に実施し,教員養成の中核的な機関としての役割を十分に果たすことが期待されている。

 そのため,今回のアフターケアの調査の全体を通じて指摘された以下の個別の事項について,すべての教職大学院で教育内容の質の保証を図るための不断の検証を行い,その改善に努めることが期待される。

4.個別所見
個別に留意事項は付さなかったものの,全体の傾向として留意すべき点を含めて主な項目ごとに所見をまとめると,以下のとおりである。

【教職大学院の目的等】
 各大学では,実践的指導力・展開力を備えた新人教員の養成と実践力・応用力を備えたスクールリーダーの養成を行うという教職大学院制度の役割を踏まえつつ,各教職大学院が目指す教員養成の目的に沿って,着実に取組を進めつつある。

  他方,各教職大学院が,大学として行う教育内容や養成すべき教員像について,学生や教育委員会等と共有化されていない場合があるという指摘があった。今後,教職大学院の目的・養成すべき教員像等をより一層明確化し,教職大学院に期待される役割を果たす必要がある。

 また,教職大学院は,教員養成政策の大きな柱として創設された経緯を踏まえ,大学教員一人一人の教員養成に係る意識改革を進め,我が国の教員養成の改革に資することが教職大学院の使命であることを踏まえた取組が求められる。教育委員会・学校等との連携が進む中で,大学教員がこれまでよりも学校現場に出向くようになったり,実務家教員が学部の授業を担当したりするなど,取組が段階的に進められているが,今後,学部段階や既存の大学院を含む教職課程全体に具体的にどのような改善が図られたのか,各大学で教育委員会等の視点を加味した検証を行うとともに,これらの取組をさらに系統的・組織的に広げることが重要である。

【「理論と実践の融合」によるカリキュラム・教育方法】
 各教職大学院では,実務家教員と研究者教員によるティームティーチングの導入など,画期的な教育が行われている。今後,さらなる協働体制の強化により,理論の実践への応用,実践知の理論化が図られ,「理論と実践の融合」による新しいカリキュラムや教育方法の確立が図られることが期待される。

 実習については,教育委員会や学生の要望,実習の目的等を踏まえ,大学ごとに様々な方法で実施されている。現職教員学生が現任校で実習を行う場合に,勤務との切り分けが明確でなく,日々の業務に埋没するといった問題が指摘される一方,学校現場の課題を直ちに研究課題として取り組めるという点で有益であるという大学も見られた。現任校での実習を行う場合には,大学が実習の目的・達成基準等を明確にし,担当教員が定期的に現任校に訪問し指導を行ったり,職務の負担軽減等を学校・教育委員会に依頼するなど,大学が責任を持って効果的な学習を行う体制を整備することが求められる。

  学部新卒学生と現職教員学生の合同教育については,学部新卒学生は現職教員学生からアドバイスを受けることができる,現職教員学生は新人教員への指導の訓練となるといったメリットがあり,各教職大学院において,それぞれの経験や能力の差に応じた教育内容・方法の工夫が行われているが,現職教員学生・学部新卒学生のそれぞれのスキルアップの観点から,引き続き,合同教育により十分な教育効果が得られているのか検証を行い,その良さを活かしつつ,両者の力を最大限に引き伸ばすことができるきめ細やかな指導体制を構築することが必要である。

【教育委員会等との連携】
 教育委員会との連携については,各教職大学院から積極的に話合いの機会を設けるなど,改善が見られる。しかし,教育委員会等のカリキュラムに関する要望等が教職大学院において十分に検討されていない,都道府県等による現職教員学生の派遣人数が十分に確保されていない,採用試験・研修の免除等の取組が進んでいないなど,教職大学院や教育委員会によって取組に対する温度差が引き続き見られる。

 今後,教育委員会・学校等との連携のための組織の実質的な運用に努め,教職大学院の設置趣旨について一層の理解を図り,積極的な連携協力のための共通認識を確立するとともに,カリキュラムや教育方法などに関して教育委員会等の要望・意見等を踏まえた改善をするなど,大学全体として一層の連携強化が期待される。

【入学者の確保】
 各教職大学院では,教育委員会に働きかけ,学部新卒学生確保のため,教員採用試験の免除,試験合格者への名簿搭載期間の延長等のインセンティブの設定等がなされている。また,入学試験の工夫や入学説明会の開催など努力を行い,全体として入学者定員の充足率が改善している。しかし,いくつかの教職大学院では,定員充足率が低い状況が続いており,各教職大学院で教育内容の質の保証を図り,現職教員や学生・社会人等に教職大学院の意義と成果を広く周知することで,学生の質を保ちつつ,安定的に定員を確保する必要がある。

【成績評価等】
 各教職大学院では,授業計画(シラバス)において,一年間の授業の方法や内容をあらかじめ明示しているものの,一部の教職大学院では,教員ごとに記述内容に濃淡があることや,実際の実習の状況等と大きく異なるなどの課題があった。

 また,授業の目標・達成基準や成績評価基準についてもあらかじめ示されているものの,学生に十分理解されていないことや,成績評価基準があいまいであると学生が感じており,その結果を学修等にフィードバックするような仕組みになっていない大学も見られた。
 そのため,各教職大学院においては,シラバスの記述内容を見直すことや,授業の目標・達成基準や成績評価基準を検証・再検討し,さらに明確化して学生に提示するよう努めることが求められる。

【教員組織整備とFD活動】
 実務家教員と研究者教員からなる教員組織の整備は,すべての教職大学院で行われているが,一部の教職大学院で年齢構成のバランスを欠くなどの状態が見受けられており,順次是正が求められる。

 FD委員会や学生による授業評価,ティーム・ティーチングによるFD,公開授業によるFDなどが多くの教職大学院で行われている。しかし,学生の意見等が教育課程の充実・改善に必ずしも十分に反映されていない大学も見られた。このような取組を組織的かつ実効性のあるものとし,さらに全学的な取組に展開するよう努めることが必要である。

【施設・設備の整備状況】
 各教職大学院で,概ね認可時の計画どおり履行されているが,ネットワーク環境の整備など,学生の学習環境の整備に課題があるなどの指摘もあり,引き続き,教職大学院の目的に照らし,十分な教育成果をあげることができるよう,必要な施設及び設備その他諸条件の整備が求められる。

5.今後の取組
本年度の調査の結果,留意事項を付された教職大学院及び平成22年度に設置された教職大学院については,来年度も引き続き,アフターケアを実施することとし,各教職大学院における改善状況を確認する方針である。また,教職大学院の認証評価を行う認証評価機関との有機的な連携を図るべく,本調査の結果を認証評価機関に送付することとしている。

※1 大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則(抄)
(平成19年3月30日 文部科学省令第10号)
第14条 文部科学大臣は,設置計画及び留意事項の履行の状況を確認するため必要があると認めるときは,認可を受けた者又は届出を行った者に対し,その設置計画及び留意事項の履行の状況について報告を求め,又は調査を行うことができる。

※2 文部科学省告示第50号(抄)
大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)第33条の規定に基づき,新たに大学院等を設置する場合の教員組織,校舎等の施設及び設備の段階的な整備について次のように定める。
平成15年3月31日
(1・2略)
3 文部科学大臣は,大学院等の設置又は課程の変更を認可した後,当該認可時における留意事項,授業科目の開設状況,教員組織の整備状況その他の年次計画の履行状況について報告を求め,必要に応じ,書類,面接又は実地により調査することができるものとする。

※3 学校教育法第109条の3(抄)
(1・2略)
3 専門職大学院を置く大学にあつては,前項に規定するもののほか,当該専門職大学院の設置の目的に照らし,当該専門職大学院の教育課程,教員組織その他教育研究活動の状況について,政令で定める期間ごとに,認証評価を受けるものとする。ただし,当該専門職大学院の課程に係る分野について認証評価を行う認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて,文部科学大臣の定める措置を講じているときは,この限りでない。

教職大学院設置計画履行状況等調査の結果等について(平成22年度) 別紙1~3 (PDF:211KB)

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高等教育局高等教育企画課大学設置室

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