県内病院で働いたら奨学金返済免除 東北大医学部生対象『朝日新聞』宮城版2011年2月4日付

『朝日新聞』宮城版2011年2月4日付

県内病院で働いたら奨学金返済免除 東北大医学部生対象 

 貸し付けたお金は、県内の病院で働いてくれれば返済不要です――。県は地域医療の医師不足を解消しようと、東北大学医学部の学生を対象に新たな奨学金制度を始めた。貴重な「医師の卵」の県外流出を防ぐのが狙いだ。

 「奨学金制度に応募して頂き、両親を楽にさせてあげると同時に、県のためにも皆さんのためにもプラスにしてほしい」

 仙台市青葉区の東北大医学部で先月13日に開かれた「県地域医療セミナー」。村井嘉浩知事が、今年度から創設した県の奨学金制度への応募を呼びかけた。2年生約100人が集まり、耳を傾けた。

 医師不足は県内でも深刻だ。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」(2008年)によると、人口10万人当たりの医師数は全国平均で224.5人だが、宮城は218.2人で全国27番目。仙台市は324.7人だが、仙台市以外は登米101.4人、気仙沼121.8人、仙南(白石市、角田市など)131.2人と軒並み低い。

 地域の医師不足を解消しようと、県は2005年度、医学部生を対象にした奨学金「修学資金貸付」制度を開始。月額20万円の貸し付けが受けられ、貸付期間と同じ期間、地域の中核病院など「県指定の病院」に勤務すれば、資金の返還が全額免除される制度だ。これまで60人に貸し付けた。

 今年度からは新たに「東北大枠」を拡充した。貸し付けは月額10万円。東北大病院の初期・後期研修や東北大大学院医学系研究科の在学期間も、2年間を限度に「県指定の病院」勤務の期間にあてることができ、大学での研究などに没頭できる。

 東北大の山本雅之・医学部長は「地域医療に貢献でき、医者として最先端の研究もできる設定で、全国でもユニークな制度。それほど厳しい条件があるわけでもない」と評価する。

 奨学金制度を利用し、東北大を昨年卒業した大崎市民病院の辻薫菜子医師は、「初めは親の仕送りとアルバイトで過ごしていたが、奨学金で経済的に自立でき、時間的な余裕ができた」と話す。

 県が昨年6月、県内の病院や診療所に実施した「必要医師数実態調査」によると、医師不足の背景としてあがったのは「求人医師の絶対数不足」が44%で最多だった。「勤務条件と医師の希望の不一致」(22%)、「病院の立地条件の不利さ」(22%)が続いている。(上田学)

 

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