奨学金貸与基準、厳格化へ 文科省、両親の年収を合計 『朝日新聞』2011年1月8日付

『朝日新聞』2011年1月8日付

奨学金貸与基準、厳格化へ 文科省、両親の年収を合計

 文部科学省は、日本学生支援機構による大学生らへの奨学金事業について、新年度から貸与基準を厳しくする方針を決めた。貸与の判断材料になる学生の家庭の年収を、両親の合計で把握する。不景気で奨学金の希望者が増えるなか、経済的に困っている学生を正確に選び、支援する考えだ。

 学生支援機構の奨学金は無利子の第一種と、有利子(上限年3%)の第二種がある。貸与を決める際は学校での成績のほか、年収998万円以下(無利子奨学金で、私立大に通う4人世帯の大学生の目安)といった家計基準を満たしているかどうかをみることになる。基本的に自己申告だが、年収を証明する書類の提出が必要になる。

 この家計基準はかつては、世帯全体の収入の合計が対象だったが、貸与規模を拡大した1999年度、手続きを簡素化するために対象を「主たる家計支持者」の収入に限定。基本的に父母どちらか1人の収入が基準になっていたが、共働き世帯が増加しており、家計の収入状況を正確に把握できないと指摘されていた。

 年収が基準を超えないよう、父母のうち収入が低い方を「主たる家計支持者」と指定する不適切な申請もあることから、11年度から第一、二種ともに共働きの場合は父母2人の収入の合計を基準にするよう制度を変更し、それぞれの年収を証明する書類の提出が義務づけられる。

 奨学金は現在、大学生の3人に1人が利用している。第一種の場合、条件によって違うがおおむね月3万~6万円ほどが貸与されている。10年度の貸与人数は第一種が34万9千人、第二種が83万5千人。進学率の上昇や景気低迷を背景に人数は増加傾向が続いている。

 だが、特に無利子の奨学金には貸与枠に限りがあり、成績や現行の家計基準を満たしているのに奨学金を受けられない学生が、2万6千人ほどいるという。文科省は基準を満たす全ての学生に貸与できるよう枠を広げたい考えだったが、新年度政府予算案で認められたのは、9千人増にとどまった。

 家計基準を父母の合計収入に変更すれば、基準を超過する年収がある家庭が出てくるとみられている。文科省は基準変更によって、不適切な申請を防ぎつつ、本当に経済的に困っている学生に優先的に貸与できるようにしたい考えだ。(井上裕一)

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