『佐賀新聞』2011年1月4日付
急患受け入れ病院をスピード斡旋 佐大病院の新構想
佐賀大学医学部付属病院(佐賀市鍋島)は、主要病院の急患受け入れ態勢をリアルタイムで把握し、適切な搬送先を判断する「救急管制塔」構想をまとめた。搬送時間短縮や「たらい回し」予防を図り、救命率アップを目指す計画。建設中の南新棟に専用スペースを確保しており、中部医療圏で試行し、重篤患者に対応する別の3次救急指定医療機関への普及も目指す。
構想では、鍋島キャンパスに建設中の地域医療支援センター(鉄筋コンクリート3階建て)の最上階に救急管制塔を設置。消防や医療機関をICT(情報通信技術)でつなぎ、大型電子パネルの地図に救急要請現場をはじめ、現場急行中や待機状態の救急車の位置や到達所要時間、最寄りの医療機関の待機医師数を表示する。
待機する医師は、脳神経や胸部外科、産婦人科などの専門分野別にICチップ付きバッジを装着。手術室などに設置したセンサーが入室を感知し、管制塔に報告をしなくても、利用状況や空き具合がリアルタイムで自動表示される。その情報をもとに、患者の容体や緊急度に応じて搬送先を迅速に選ぶ。
消防庁によると、119番通報(覚知)から医療機関収容までの所要時間の全国平均(2009年)は36・1分。佐賀は33・7分で、全国より短いが、10年前に比べて6分近く伸びている。
医療機関に受け入れを照会した回数は、重症患者で4回以上だったケースが全国では1万3164件で全体の3・2%。佐賀は88件で2・5%。「都市圏に比べれば比較的スムーズ」(県消防防災課)という見方があるが、「患者受け入れが重なり、待たせるケースも少なくない」(病院関係者)という。
一方、厚生労働省が全国の救命救急センターを対象にした01年の実態調査で、迅速な搬送や適切な初期治療が施されていれば助かった可能性があった「防ぎ得た外傷死亡(PTD)」は約4割。千葉県の04年調査では、交通事故死者のうち7人のうち1人がPTDやPTDの疑いがあり、救えた可能性があった。
救急管制塔構想は、こうした潜在的な問題を改善する一方、救命救急センターなど一部機関への急患集中を分散させる狙いもある。救急隊の経験や医療機関との関係で、頼みやすい病院を選ぶ傾向が少なからずあるといい、管制機能を消防ではなく病院が持つ構想は、そうした傾向を解消して平準化する。岐阜大が先行している。
佐賀大病院の宮﨑耕治病院長は「搬送先が見つからない場合は、比較的にマンパワーのある佐賀大で受け入れることを担保しながら、患者の重複受け入れを解消していきたい」としている。