社説:論調観測 来年度予算 「自前」編成に落第点『毎日新聞』社説 2010年12月26日付

『毎日新聞』社説 2010年12月26日付

社説:論調観測 来年度予算 「自前」編成に落第点

 民主党政権による2回目の予算編成、初めて概算要求段階から「自前」で取り組んだ来年度予算に、各紙社説は手厳しい判定を下した。

 各紙が強調したのは借金頼みの予算構造である。今年度に続いて新規の国債発行額が税収見込みを上回る事態となった。これを「異常」(毎日、朝日、産経)、「お寒い内容」(読売)と指摘し、日経は、借金額が今年度を下回ったことに言及しつつも、予算案全体には「強い懸念」を表明した。

 毎日は、政権交代直後の1年前は各閣僚が担当の予算に目を光らせる「査定大臣」になるとのかけ声があったが、今回は省益を代表する「要求大臣」になったと批判。また、予算編成の目玉とされた「元気な日本復活特別枠」は「半分以上は政権公約とも成長戦略とも直接関係のない経費に回っている。歳出を本気で減らそうという意気込みが伝わらない」と論評した。

 さらに「消費税など安定した財源を拡充」するため、「与党内の結束」と「野党との問題意識の共有」を求めた。

 消費税増税の必要性を議論の中心に据えたのが朝日である。「ムダ減らしだけで財政を立て直す路線は、とうに破綻している」「増税カードを加えなければ、財政再建の解がないのは明らかだ」とし、「消費増税を軸とする税制の抜本改革の道筋を早く示す」よう主張した。

 これに対し、読売、日経、産経各紙は、消費税増税などによる財政構造の改革に加え、民主党マニフェストの見直しにも力点を置いた。

 読売は、マニフェストへの「こだわり」が「予算編成の迷走に輪をかけた」として、子ども手当の増額、高速道路無料化や農家への戸別所得補償の拡充などを取り上げ、「財源がないというのに、理解しがたい対応である」と批判した。また、これらの増額分の財源確保のために高所得層への増税を決めたことは「問題だ」と、撤回を求めた。

 日経は、子ども手当増額などを疑問視するとともに、「根本的な財政や社会保障の改革に、なんら手を付けていない」と苦言を呈し、社会保障について「年金や医療、介護の給付を受ける今の人たちに痛みを感じさせないことを優先した」と強調した。

 産経は、「バラマキ公約の財源確保に終始した印象が強い」と述べ、民主党にこうした公約の撤回を要求した。これら3紙は、国民の負担増を先送りしたのは来春の統一地方選を意識した結果だとも指摘した。【論説委員・岸本正人】

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