憂楽帳:主計官の苦笑 『毎日新聞』 2010年12月28日付

『毎日新聞』 2010年12月28日付

憂楽帳:主計官の苦笑

 「スーパー高度の政治判断です」。研究者に配られる科学研究費補助金が文部科学省の要求額より533億円、25%も上積みされた異例の11年度予算案。記者に問われた財務省主計官は、苦笑交じりに理由を述べた。

 「多いにこしたことはないが、積算根拠があるのは要求額まで」と文科省も当惑を隠さない。「科学技術予算を減らすな」という菅直人首相の意向で伸縮自在な補助金を増額、中でも少額の若手支援拡大で帳尻を合わせた。

 事業仕分けで批判を浴びたスーパーコンピューター開発や宇宙開発もほぼ満額が認められ、国立大の収入の大半を賄う運営費交付金も、大学法人化後初めて減額に歯止めがかかった。

 「理系首相の英断」に沸く関係者。だが、喜ぶのは早い。大学予算の据え置きは1年以内に大学間の合従連衡や「すみ分け」の改革案を出すとの条件付き。定員割れの私学には容赦なく補助金半減の「規律強化」で臨む条項も入った。「未来への投資」のため借金してツケも未来へ回すのか、増税か。苦笑の意味は深そうだ。【山田大輔】

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