産経ニュース配信記事2010年12月25日付

【平成２３年度予算のポイント】（下）環境・雇用・農業・教育
 

■環境　温室効果ガス削減重点

　雇用対策としては、職業訓練の受講を条件に失業者に給付金を支給する「求職者支援制度」を１０月から実施するため、１７３億円を計上した。平成２３年度は１２万６千人が対象予定で、月１０万円が給付される。

　また、最低賃金引き上げに向けた中小企業への支援金を新たに５０億円計上したほか、ハローワークへの大学生向けの窓口設置など新卒者の就職支援に前年度からほぼ倍増となる１１０億円。また、非正規労働者の正社員化推進費用として、同じく２・４倍の１９４億円を計上した。

　女性の再就職を支援するために、ハローワーク内にオムツ換えコーナーなどを備えた「マザーズコーナー」の増設費用として２２億円が盛り込まれた。中小企業に関係する予算は、前年度比３％増の１９６９億円。資金繰りをめぐる厳しい環境が続いているため、信用保証を行う日本政策金融公庫の出資金を同２５％増額して７７１億円計上した。また、中小企業の技術力向上を図るために、研究開発支援制度を拡充して１６０億円を計上。合同説明会などの事業費として新たに３億円を計上した。

■雇用　職業訓練条件に給付金

　公立の小学１年の３５人学級化導入を決め、増員する２３００人の教員人件費として４９億９３００万円を義務教育費国庫負担金に上乗せ計上した。義務教育全体の教職員定数は、児童生徒数の減少に伴う自然減などとの差し引きで３００人の純増で、定数純増は２年連続。

　毎年１％程度の減額が続いていた国立大学法人の基盤的経費である運営費交付金は減額率を圧縮し、平成２２年度比０・５％減の１兆１５２８億円。１６年度の大学法人化以降では減額率を最小に抑えた。私学助成は０・５％減の４３６８億円。高校授業料無償化は、対象生徒の減少で０・３％減の３９２２億円を計上した。全国学力・学習状況調査（全国学力テスト）は、７・１％増の３６億円で、２４年度に理科を追加する準備を進める。

　政府全体の科学技術振興費は数％減で調整していたが、菅直人首相の指示を受け一転増額し、２２年度比０・１％（１８億円）増の１兆３３５２億円。このうち科学研究費補助金は文科省の概算要求額（２１００億円）を大きく上回り、過去最大の６３３億円（３１・７％）増の２６３３億円。

■農業　個別補償を本格実施

　総額は７・４％減の２兆２７１２億円と１１年連続で前年度を下回り、昭和５０年度予算以来の低水準となった。予算のうち１０９０億円を一括交付金に回したことも減少の要因。

　平成２２年度からコメで先行実施している農業の戸別所得補償制度は、本格実施に伴い関連予算を含めて８００２億円と、政府による農業体質強化の方針を受け、概算要求額７９５８億円を上回った。

　２３年度は新たに小麦などを対象作物に加えるほか、農地の集約を支援する規模拡大加算も導入する。

　高病原性鳥インフルエンザの緊急防疫体制整備の支援など消費・安全対策交付金は３０億円。

　２２年度に６割以上減った農業農村整備（土地改良）予算は横ばいの２１２９億円。ただ一括交付金化を受け、公共事業全体では２０・９％減の５１９４億円となった。

　家畜伝染病の口蹄（こうてい）疫が１０年ぶりに発生し、宮崎県で猛威をふるったことを踏まえ、発生の予防や再発に備えた危機管理体制の強化を目的に「口蹄疫総合対策」費を計上した。事業費は８億８千万円。

■教育・科学　小学１年３５人学級化

　温室効果ガス排出量の２５％削減に向けた施策に重点配分する。地球温暖化対策を進めるとともに成長分野である環境ビジネスを支援。環境分野の市場拡大により１４０万人の新規雇用創出を目指すとした「新成長戦略」を支える。

　財源の一部に、来年１０月から導入予定の地球温暖化対策税（環境税）の税収３５０億円を充てる。

　新規事業では、二酸化炭素（ＣＯ２）の排出抑制に効果的な民間事業の支援に３０億円、電気自動車など省エネ製品のリース料軽減のため２０億円をそれぞれ計上した。

　このほか、１０月の生物多様性条約第１０回締約国会議（ＣＯＰ１０）を受けた国内対策として、エコツーリズム支援や山岳環境保全に４億円を盛り込んだほか、発展途上国を支援する「日本基金」に本年度と同額の１０億円を出資。

　優れた産業廃棄物処理・リサイクル技術を持つ企業の国際展開を支援する事業に６億円を計上した。

　小児ぜんそくやアトピー性皮膚炎など子供の病気と化学物質の関係を調べる「エコチル調査」は４８・４％増の４６億円とした。